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欧州男子

小松直行の週刊オフチューブ - おまちかね「オメガ ヨーロピアンマスターズ」

2014年9月4日(木)午前10:44

LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、ゴルフ最新ニュースをピックアップ。小松さんならではの視点からゴルフ界の最新動向をお届けします!

目次:
・オメガ・ヨーロピアンマスターズ
・歴代勝者の肖像:アレキサンダー・ノーレン(SWE;2009)


オメガ・ヨーロピアンマスターズ
オメガ・ヨーロピアンマスターズ
おまちかね、スイスアルプスの麓の壮大な景色の中で行われるヨーロピアンマスターズです。毎年、9月第一週の試合なので、この試合を見る と秋が来るのを感じますね。舞台はローヌ谷を見下ろす高台にある山岳リゾート、クラン・モンタナにあるクラン・シュル・シエールGC。この試合は1923年に始まったスイ スオープンで、以来80回目。1972年に欧ツアーが発足した時から、ずっと同じコースで毎年開催されているのは、このヨーロピアンマスターズだけです。マッターホルンから モンブランの山々まで見渡せる絶景コースでのゴルフをお楽しみください。

去年までにも約3億円を投じて改造が行われ、バックナインの数ホールが大きく変わりました。今年はさらにほぼ同額をかけてフロントナインを改造。ハザードも増やされてタ フになりました。1番、2番、4番ホールはフェアウエイが作り直され、フェアウエイバンカーは改造されてはっきり見えるようになりましたが、ティーショットはさらに神経を 使うようになりました。5番ホールは25ヤード延長され、ティーが右に移動したので、もはやティーショットでグリーンを狙うのは無理になりました。そして9番はほぼ新しく 作り直され、グリーンコンプレックスも新しくデザインされました。

去年の改造の一つの目玉は石段の客席が作られた13番(195ヤード、パー3)でした。まるで劇場空間で、それをテレビで見る我々にも興奮が伝わってきましたね。今年は続く 14番ホールを35m短設定にして、559ヤードのパー4としてプレイします。標高1500mなので飛距離は1割増しですが、バーディーはいくつ出るでしょうか?

<オメガ・ヨーロピアンマスターズ放送予定日時>
1日目: 9月04日(木)午後10:30?深夜1:30
2日目: 9月05日(金)午後10:30?深夜1:30
3日目: 9月06日(土)午後10:30?深夜2:00
最終日:9月07日(日)午後11:00?深夜1:00

*3週間後のライダーカップ出場選手が決まりました。今週はその中のビクター・デュビソン、ジェイミー・ドナルドソン、そしてトーマス・ビヨーンが出場。ビヨーンはライダーカップ出場をかけたポイントレースの始まった最初の試合である去年のこの大会で勝って、見事に13年ぶり3度目のライダーカップを戦う一員となりました。ビヨーンは2011年にも勝っているので大会3勝目、そして連覇を狙います。それをやってのけたのは1977年、78年に連覇し、89年にも勝っているセベ・バレステロスでした。

*2009年からアジアツアーとの共催となっています。アジアからは30名が出場。
その枠で川村昌弘選手が出場します!

*ミゲル・アンヘル・ヒメネス(50歳)は1989年の初出場以来、今年で26年連続出場。22年目の2010年に優勝してツアー記録を作り、それを今年はスペインオープンで自ら破り、27回目の出場で初めて勝ちました。

*ライダーカップの欧サイド副キャプテンに追加指名されたヒメネス、JMオラサバル、Pハリントンも今週、そろい踏みです。

アレクサンダー・ノーレン 歴代勝者の肖像:
アレクサンダー・ノーレン(スウェーデン、2009年)

やるべきことをやってから進む



Alexander NOREN (SWE);Omega European Masters06 Sep, 2009, Crans-sur-Sierre, Crans, Switzerland
「自分のゲームがこんなにいいと感じたことは、これまでにありませんでした。きのう、パッティングもいい感じでしたし。前回、一打差でトップに立っていた時の試合から学んだことがあります。いったん首位に立ったのならば、勝たなくてはならない、ということです」

「楽しいバトルでしたね。15番のアレックスのショットは素晴らしかった。彼にお祝いを言おう」

4打差から、見事なアプローチを連発して中盤に追いついたウエールズのブラッドリー・ドレッジが試合後にそう言った。 3人で回る最終組、ノーレンはC・シュワーツェルに2打差の単独首位。出だしに連続バーディーをものにして4打差となった。シュワーツェルが連続スリーパットで後退、8番で ノーレンがボギーにしたところから、ドレッジの出番となった。

9番パー5で、ドレッジが深いラフから63ヤードの第3打を入れてしまう。10番は両者バーディ。11番ではドレッジがグリーンサイドのラフからブレードで転がすようにしてバー ディーを決めたところでノーレンと並んだ。9番でスーパーイーグルを見せられたときのことをノーレンは、こう言った。

「望むところだと感じましたね、自分のラウンドに集中するのに好都合だと思ったんです。でも、実際は厳しかった、私はバーディーパットを失敗してしまいましたから」

ノーレンに火をつけたのは、ドレッジの11番の、いかにもプロらしいバーディーだったかもしれない。

つづく2ホールでともにバーディーとボギーを一つずつとり、2ホール連続のパー5に来た。先を行くロス・マッガワンが伸ばして来て、争いに加わるかに見えたが、パー5を2 つともパーにしてチャンスは薄れた。

14番でノーレンが2パットのバーディー、ドレッジはパー。そして、15番。ノーレンがグリーンサイドのバンカーからチップイン・イーグルを決めた。ドレッジもバーディーにするが、果敢なバンカーショットがそのままホールアウト するや、勢いはノーレンのものとなった。ノーレンの2打差リードとなり、のこり3ホールは両者ともパーで結着した。

ノーレンはこの年、そこまでの17戦で平均パット数が31.2と、前2年の29.4、29.5と比べ、明らかにパッティングが悪かった。GIRも1.817で140位だったが、スイスへ来てツー ボールパターに変え、4日間平均28.5パット、乗せれば1.64パット。それも、GIRは70人のフィールドでナンバーワンの80.6%である。

グリーンに乗せてくるゴルフが身上だったノーレンだが、グリーンをはずすとパーセーブ率が悪く、スクランブル部門は180位だったが、この試合では4回はずして5パットでま とめたゴルフだった。

こうした数字から見れば、パッティングが見違えるように素晴らしかったということになる。それは、今季からノーレンについているキャディー、コリン・バーンズがつねに 強調していたことだったようだ。コリン・バーンズはかつてレティーフ・グーセンとともに全米オープン優勝をものにしたダブリナーだ。

「キャディーのコリンが日頃から言い続けていたのが、“ショートゲームだ。ショートゲームを大事にしようぜ"ということだったのですが、きょうのブラッドリー・ドレッ ジを見ても、思い知りましたよ。すべてはチッピングとパッティングなんですよ」

スウェーデン出身の27歳、180cm、70kg。ツアー3年目にしての初優勝。どちらかというと地味だった。もちろん、外見は若々しく、スウィングも切れ味がいいのだが、そこま での経歴がそういう印象を与えたのだろう。思い当たるのは、アメリカでの大学時代を同じ頃に過ごしていたアレハンドロ・カニザレスや大学後輩のパブロ・マーティーンが 華々しいデビューを飾っていたことだ。
カニザレスはアリゾナ州立大学時代、1年次からオール・アメリカンに選ばれる活躍で大学選手権にも勝っており、2006年に大学を卒業するや、欧ツアー出場3戦めのロシア・ オープンで初優勝。

オクラホマ州立大学でのノーレンは、新入生として代表ティーム入りした二人のうちの一人であったが、All-Big 12のセレクションに2度、2005年にサード・ティーム・オール ・アメリカンに選抜されたくらいだった。

マーティーンはまだ大学3年で20歳だった2007年3月末、ポルトガル・オープンで欧ツアー史上初のアマチュア優勝を遂げている。じつは、その試合で3日目に単独首位に立って いたのがノーレンだった。ノーレンはマーティーンに2打差、ロス・マッガワンに1打差をつけていて最終日を3人で回ったが、76で崩れて11位タイに終わった。ノーレンと同い 年のマッガワンも76で、マーティーンが68で快挙を成し遂げることとなったのだった。

2005年、ビジネス・マーケティング専攻で学位を取得して卒業した後、欧ツアーのQスクールでは46位に終わり、2006年は2部のチャレンジ・ツアーで22戦1勝、トップテンに10 回。
2月のコスタリカ・オープンはプレイオフで同郷のヨハン・アクスグレンに破れるが、8月のジュネーブでのロレックス・トロフィーでそのアクスグレンに3打差をつけて優勝。 最終戦では最終日に64をたたき出して2位に食い込み、賞金ランキング3位で昇格を決めた。

このとき賞金ランク4位だったマーティン・カイマーとは、ルーキー・シーズンの2007年に新人賞を争ったが、カイマーが破竹の勢いを見せていたこともあって、目立たなかっ たかもしれない。それでもKLMオープンで3位タイなどトップテン4回、オーダーオブメリット63位だった。カイマーとは同じマネジメント会社の縁もあって仲がよく、オフには アリゾナで一緒に練習するという。

2008年のノーレンはトップテン4回。最終日に伸ばしての3位はあったが、優勝争いはなかった。そして2009年は2月のマレーシアと2週後のインドネシアで、最終日を首位から1 打差で迎えていながら7位タイ、2位タイに終わっていた。

しかし、中東からの6週連続出場が災いしてか3月に手首を故障し、それがよくなったところで、今度はランニング中に膝をケガ。3、4、6月を休んだ。全英オープンには、2007 年に予選から出場を果たし、初めてのメジャー体験。その独特の雰囲気に魅入られたが、今年はケガで予選も出られなかった。しかし、リハビリと、さらなる筋力強化に取り 組んでケガを乗り越えたところで、初優勝が来た。

「ホッとしました。何度か自問したことがあったのです。欧ツアーで勝てるだけの力量が自分にあるのかどうか、自分のゲームで何か変えなければ勝てないことがあるのかど うかって。 今週は自分を証明することが出来ました。いいプレイが出来て、4ラウンドを通してスコアを伸ばしていけるんだっていうことをね。

「前回、首位に立ってファイナル・ラウンドを迎えたときには、ひどいプレイをして11位タイで終わっていましたが、きょうはおそらく短いパットを2度、外したくらいのミス しかなくて、それで5アンダーで回った。これは自信という意味で大きな証しになることです」
地味な印象、と先に書いたが、ノーレンのこれまでの道のりをよくたどってみれば、着実に一歩ずつ昇って来たことがわかる。優勝インタビューで、プロ転向は遅かったので はないですかとたずねられ、大学へ行ったのは、まだ、プロになる準備はできていなかったからだと答えた。その後の歩みを見れば、じっくりと力を養って準備して来たこと がよくわかる。

8歳からゴルフをはじめ、練習熱心で、いつも夕食の時間に遅れるほどだったという。自分の何がどうなのかを把握して、練習をきっちりこなしてからでないと次に進めない、 というタイプなのだろう。

プロになってからは、スウェーデンでのジュニア育成にも関心を示し、毎年、自らの名を冠したAlex Noren Junior Open を、ストックホルム南郊、かつてのホームクラブであ るハーニゲGC(Haninge GK)で開催しているという。彼自身、いい指導者になれるタイプと見た。

「じつのところ、ウィニング・パットを沈めたときのうれしさは、思っていたほどではなかたんですが、いま、まさに喜びが湧いて来ましたよ、素晴らしい気分です」

インタビューの終わりに、ノーレンはそう締めくくっていた。

2014年現在、ノーレンは戦線を離れている。5月のロンドンで初日が終わって棄権。手首の故障が再発、慢性化した模様。ずいぶん長引いているが、これこそ本領発揮でしっか り治して乗り越えてもらいたい。
(小松直行)

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