ニュース・コラム

欧州男子

強すぎてアメリカ追放となった南アのレジェンド「ボビー・ロック」

2015年3月6日(金)午前7:00

欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、欧州ツアーの最新動向や見どころ等を、小松アナならではの視点でお届けします。

目次:
■アフリカオープン
■強すぎてアメリカを追放になったボビー・ロック
■小松の小耳:ロイヤル・セントジョージズ女性会員受入れ
■こまつのソラミミ♪:「ワンペナ、ツーペナ」

アフリカオープン

世にゴルフトーナメントは数あれど、この試合ほど壮大な名前は他にあるでしょうか。
アフリカオープン。そのものズバリでありながら、人類の母なる大地、アフリカ大陸の原初的自然と野生、経済的発展の潜在力を感じさせるネーミング。
荒々しく過酷な環境と背中合わせの、美しく心地よい場所。幻想を持たず、現実を享受しつつチャレンジする者たちを、アフリカは腕を広げて受け入れ、歓迎してくれるのでしょう。

南アフリカ3連戦は南東部イースタンケープ州に移動。バッファロー川がインド洋に注ぐ、南ア唯一の河口港イーストロンドンです。ケープタウンとダーバンの中間。南西ポートエリザベスまでインド洋に臨む200キロの白砂サンシャイン・コーストが連なります。北東はワイルドコースト。テニス、スカッシュ、ボウルズ、水泳、ラグビー、クリケット、ソフトボール(2000年世界大会)、バドミントン、サーフィン、釣りと各種スポーツイベント開催も盛んです。

イーストロンドンGCは市街地から北へ5kmにあり、コース北東側にサーフィンで世界的に有名なナフーンビーチあり。全長6,679ヤード、前半パー3ひとつ、後半にパー5ひとつの37/35=72。
クラブ創立は1893年、現コースは3つめのレイアウトで、設計はカーネル・SVホチキン。これまで南ア・オープン6度開催。2009年から7年目連続でアフリカオープンの舞台となっています。

コースの見下ろすインド洋は壮観ですが、海風が吹きつけます。海岸線の地形がそのまま各ホールをつくっており、ウォーターハザードなし。全長は短いながら、急な高低差はあり、フェアウエイはうねり、太鼓橋を上り下りするようなホールもあって、景色も野趣も戦略性もまとめて楽しめる(?)コースです。
9番ホール470ヤードクラシックでタフなパー4で、難しさでも毎年1番の名物ホール。

それでも、過去5年間の優勝はロースコアで決まりました。南ア・サンシャインの試合として2008年に始まり、欧州ツアーとの共催になった2010年は、シャール・シュワーツェルが20アンダーで優勝。2011年と2012年はルイ・ウーストヘイゼンの連覇で16アンダー、21アンダー。2013年はダレン・フィカートが16アンダー。そして去年は20アンダーでプレイオフ。奥さんをキャディーに、オリバー・フィッシャーを退けたトーマス・エイケンがかちました。
大会6年目の今年は、先週勝ったアンディー・サリバンをはじめ、優勝争いを演じたプレイヤーがそのまま来ています。



アフリカオープン 放送日時

※全ラウンド衛星生中継!
1日目:3月6日(金)午後4:00?8:00
2日目:3月7日(土)午後4:00?7:00
3日目:3月8日(日)午後4:00?7:00
最終日:3月9日(月)午後4:00?8:00

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南アの偉大なプレイヤー:ボビー・ロック

アメリカで、アメリカ人プロたちの独占的優位体制を崩したのは南アフリカのボビー・ロックとゲイリー・プレイヤーでした。はじめに、それをやったボビー・ロックは、なんと、強すぎてアメリカを追放されたのです。

ボビー・ロック(アーサー・ダーシー・ロック;1917-1987)は南ア・アマチュア2勝、南ア・オープン4連勝を含む9勝。若い時期には大きなフックだけを打ち、ピンがどこにあろうとグリーンの中央に乗せ、パッティングさえもフックさせて長いバーディーをものにしました。ショートゲームにも秀でて全英オープン4勝、世界中で64勝をあげています。

コースではつねにプラスフォーに白く丸い正統的鳥打ち帽。決して急がず、どんなときにも悠然たる態度でプレイする姿は、若い世代のお手本でした。悪天候になると一層、慎重になる様子に、プレイが遅いと言われることも多かったのですが、 ショット前の手続きが入念であっても、およそ3時間15分でラウンドするのがつねだったといいますから、1970年代の基準に照らしても遅い方ではありません。現代の後輩、トレバー・イメルマンが2008年のマスターズに勝ったことを、もしロックが聞いても、最終日に5時間10分かけたことを褒めることはないでしょう。

海外では1938年のアイリッシュ・オープンをはじめ、ニュージーランド、オランダ、カナダ、フランス,エジプト、スイス、ドイツ のナショナル・オープンで勝ち、米ツアーでもホーガン、ネルソン、スニードと戦って3年間に公式戦59戦で11勝しています。1948年のシカゴ戦勝記念トーナメントで勝ったときの16打差は,現在でもツアー記録です。

ただ、当時のアメリカでは世界を飛び回るプレイヤーは好まれず、1949年にロックが全英オープンに勝った後、ヨーロッパに留まって、その間の米での数試合に出なかったことを理由に、米PGAはロックを規約違反としてツアーから永久追放しました。

ジーン・サラゼンはそのことを、「この30年間にゴルフ界でなされた最も恥ずべき決定」と評しました。追放措置は2年後の1951年に解除されましたが、ロックはアメリカへ行かずにイギリスを拠点として活躍を続け、ライバルのピーター・トムソンらとしのぎを削りました。1949年、50年と全英オープンを連覇。3連覇はマックス・フォークナーに阻まれますが、52年にトムソンを破って勝ちます。トムソン3連覇のあとの57年にセント・アンドルーズでトムソンを3打差で下して4勝目をあげました。

1960年にヨハネスブルクに向かう途中での列車との衝突事故で重傷を負い、以後の競技生活が困難となったのは残念でした。1977年に世界ゴルフ殿堂入りしています。

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小松の小耳

R・セントジョージズが女性会員受け入れ: 全英オープン開催コースのなかで3つのクラブが会員を男子に限定してることで、ずっと批判の声が上がっていたが、その一つであるロイヤル・セントジョージズ(1887年創立)が2月14日(!)に開催したメンバー総会で女性会員受け入れのための規約改正を決めた。投票数の90%が女性受け入れに賛成したとのこと。残るはミュアフィールドとロイヤルトルーンだけが男子限定を謳っている。
<資料:ロイタース、2015年3月4日付記事>

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こまつの空耳
新コラム:「えっ、何か言った?」・・・・ゴルフ中継で気になる用語をチェック!

「ワンペナ、ツーペナ」
 かつて、戸張捷さんが試合中継の中で「ツアー」という言葉を英語として正しい発音でお使いになるのを聞いて、私はこれで少しずつゴルフ英語も変わるかな、と期待しました。

英語をはじめ外国語には、日本語には無い音がたくさんあって、それでもその言葉を使いたいときには他の音で便宜的に置き換えて使うことになってしまうわけですが、日本語にないからと言って、努力しなくてもいいというわけではないと、私は感じていたからです。

英語を日本語化して使うことと、英語を日本語の中で使うことは、使い手の思い次第でしょうが、放送となると難しいところです。ツアーかトゥアーか、ルーチンかルーティーンか。日本語放送の中に英語が織り込まれたときに、日本語的に変換して話すべきなのか、英語は英語本来の発音に照らしてしゃべるのか。

ストレートなニュース番組のなかでは、現在の日本語の中で慣用される発音を採用することとなり、そうした各種のケースをリストアップすることは可能です。しかし、トーナメント中継のように長時間で、会話も多く、しゃべり手の個性の出やすい放送では、杓子定規な統一は必要ありません。日本語の中に定着した発音があろうとも、より原音に近い発音をすることは妨げられないと、私は思います。話し手のスタイルにもつながることであり、その言葉の性質や、その時々の文脈によっても変わるものでありましょう。

その選択は話し手の自由裁量でいいのでしょうが、言って見れば話し手のセンスが問われることになります。話を伝えたい相手に、伝えやすい言葉遣いを選ぶセンスと見識であり、私たちのコミュニケーションを巡る“いまの空気"に対する感覚にかかっている、ということになりましょう。ううっ。たいへんなこってすね。

たとえば、グリーの早さを知るためのスティンプメーターを「スティンプミーター」と言うなら、“Stimp-meter"のことであると知る人には、「この話し手は英語はできるだけ英語らしく言いたいのだな」という印象を与えることになりましょう。日本語で会話をする以上、どこかは妥協的なものであるとしても、ゴルフに関連する英語名称を、一貫して本来の発音に近いもので通すように努力するなら、そのコメンテーターの英語に関する信頼感を視聴者に与えることだろうとは思います。まあ。この例では「スチンプメーター」「スティンプミーター」は違和感があるな、というのが、現在の日本語の感覚ではないかと私は思いますが。

逆に言えば、もしも「スティンプミーター」と言う同じ人物が、「オーバードライブ」とか「カップイン」とか、日本語のなかの誤訳やカタカナ造語をなんの前置きもなく使ってしまったら、視聴者にそれらは英語として通用するという誤ったメッセージを送りかねません。私としては、視聴者の方々がそのコメンテーターの評価を下げるだけのことだろうと、半分は願っておりますが。

また、前置きが長くなりました。今回は省略が日本語の醍醐味であり、下品にならず、誤解を招かない範囲で使われるなら、生き生きとした会話や描写に欠かせない、ということが言いたいのであります。たとえば、「ワンペナ」は一打罰と言い換えることはできますが、軽快さが違いますよね。「ツーペナ」は「トゥーペナ」でも可能でしょうが、それはある文脈で笑いを取りたいという高等な意図がなければ成立しないでしょう。やはり、省略語であって英語としては通用しないということを、暗示できるかどうかという点を考えても、「ツーペナ」が基本ですね。

「ワンオン」「ツーオン」などは、一言で言い切って了解しあいたいというゴルファー同士の気持ちから出来上がって慣用されているのではないでしょうか。英語的にみてどうかなどという野暮なことより、ゴルフをする人たちの間でのみ通用する一種の符丁であると理解するべきなのです。これらの言葉も、放送では使い方次第であり、視聴者との間の共感の度合いにかかっていると言えしょう。
(小松直行)

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