ニュース・コラム

欧州男子

小松直行の週刊オフチューブ

2014年10月29日(水)午前9:54

LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、ゴルフ最新ニュースをピックアップ。小松さんならでは視点からゴルフ界の最新動向をお届けします!

目次:
コマーシャルバンク・カタールマスターズ?ジェイソン・ダフナー参戦!
「誰が冷静でいられるかっていう勝負になるんです」?歴代勝者の肖像:ロバート・カールソン(スウェーデン)
小松の小耳

?湾岸スウィング:今週はカタール!?
中東での3連戦の緒戦だった先週のアブダビはパブロ・ララサバル(スペイン、バルセロナ)がものにしました。パー5の最終ホール2打目3W、「力の限りまっすぐ打とうと思った」という一打は圧巻でしたね。年初にペルシャ湾岸で勝つとその年は活躍してくれるプレイヤーが多いので楽しみです。

2戦目の今週はドーハ。今年17回目のカタールマスターズ。毎年の舞台、ドーハGCは先週のアブダビGCと同じピーター・ハラダイン設計。1996年にQatar National Hotels によって設立。2002年からカタールゴルフ協会が所有しているコース。首都ドーハの北西8km、空港から20分。ウエストベイラグーン地区に位置しています。石灰岩の岩盤が露出し、もともとやしの木がわずかに茂るピクニック地であったところに、100キロ遠隔地から砂を運んで造成したそうです。カタールは国土の大半が砂漠と岩の荒野で雨は非常に少なく、三方を海に囲まれていて風が吹きます。コースも風次第。今週は3日目に南風が吹きそう・・・。

『196cmの長身、クリス・ウッドの雄たけび!』
クリス・ウッド去年、劇的な決着をみた試合はいくつもありましたが、なかでもこの試合には観ていて力が入りました。
クリス・ウッド(イングランド)が3打差単独首位で最終日に入りながら、3番でダボ。盛り返しますが終盤にはセルヒオ・ガルシアとジョージ・コツィエを1打差で追いかけて迎えた最終ホール、パー5。202ヤードから6アイアンの2打目を乗せてお膳立てをしたウッドは、イーグルパットをねじ込んで見せました。
そこまで優勝を逃して2位なること3回、トップテン19回の末に、ついにきた初優勝。普段は穏やかなウッドが迫力ある雄たけびを上げたのが印象的でした。
2打目の6鉄は2013年1月の月間最優秀ショットに選ばれました。

湾岸スウィングはそれぞれ個性的な試合。なかでも優勝トロフィーは世界の各ツアーの試合の中でも見事です。真珠を抱く阿古屋貝をかたどった“マハラ・トロフィー”を今年は誰が?

【コマーシャルバンク・カタールマスターズ 放送日時】
1日目:1月22日(水)午後9:30?11:00
2日目:1月23日(木)午後9:30?11:00
3日目:1月24日(金)午後10:30?深夜1:00
最終日:1月25日(土)午後10:30?深夜1:00(最大延長 深夜2:00)

* 全米プロの覇者ジェイソン・ダフナーが今年も参戦。05年優勝のアーニー・エルスも始動。先週は振るわなかったH・ステンソン、S・ガルシア、L・ドナルド、M・カイマー、T・ビヨーン、MA・ヒメネス、D・クラークにも注目しましょう。

 

?歴代優勝者の肖像:ロバート・カールソン(スウェーデン)2010年?
『泰然自若』
ロバート・カールソン欧ツアーにもクールなプレイヤーいますが、ロバート・カールソンもそのひとり。ラウンド中はいい時も悪い時もあまり態度や表情に出しません。
2010年のカタールマスターズでは、最終日をトップに並んで迎えたポール・ケイシーとブラッドリー・ドレッジが失速。勝負は最終組のひとつ前を一緒に回るリー・ウエストウッドとカールソンの一騎打ちになりました。

カールソンは2008年、ウエストウッドは2009年の賞金王。2年間の王者同士の勝負は見応え十分。
2打差から出て行ったカールソンは5番から14番までの10ホールで5つ伸ばします。ウエストウッドは出だしの連続バーディーでトップに並ぶが、そのあと3つのボギーを喫してしまいますが、バックナインに入って5ホールで4つのバーディーを決めて、カールソンに1打差に迫ります。

12番のパーセーブが重要だったとカールソンはあとで振り返っていました。9番パー5で3つめのボギーを叩いたウエストウッドが、折り返して連続バーディーにしていて、にわかにパッティングの冴え始めたウエストウッドの復調を感じたカールソンは12番でアプローチを左に外しますが、そこからパーセーブ。

「彼のパットが決まり出したら毎ホールでとってくる。だから一歩も引かないでプレッシャーを維持しつづけることが大事だったんですよ」

ウエストウッドの方は歯ぎしりをしながらのプレイでした。
ティーショットがグリーンに届く短いパー4の16番で、3パットのボギーにしてしまって2打差。つづく17番では長いバーディーパットが惜しくも入らず。一方でカールソンはバーディーにして3打差。パー5の最終ホールは、刻んだカールソンが3打めをピンに絡めてバーディー。ウエストウッドに4打差をつけて結着しました。

『ウエストウッドの乱調と感情爆発』
リー・ウェストウッドウエストウッドには理由がありました。前日に使い慣れたPING G10ドライバーのフェースにひびが入ってしまい、予備を使わざるを得ませんでした。
ティーショットは左のラフに入り続け、勝負どころでの不本意なライに悪態をついていました。いつもはミスが出ても感情的にならないウエストウッドが、入らないパットに大声を出すさまは、黙々とコントロールされたショットを繰り出すカールソンと対照的でした。

「優勝を争うグループにはいいプレイヤーがいて、いいプレイをするわけです。だから誰が冷静さを保っていられるか、誰が一番ミスをしないで、チャンスが来たときにバーディーを決められるかっていうことにかかってくる。私はきょう、それをなんとかやりましたし、回りで何があっても気にし過ぎないようにした。とにかくプレイに専念できました。つまりですね、誰もが凄いショットを打てるけれども、もし冷静さを失ったり、落とさないですむようなところでミスしたりすると、一気に脱落してしまうんです」

上がり2ホールのバーディーはツキではなく、きっちり事を運んだ結果であるように見えました。
カールソンの最終日の65は週間ベストスコア。リーダーボードを見れば実力者ばかりなので、「何か特別なことをやらなければならないと思っていた」というカールソンは、最後まで落ち着き払っていました。

『目の故障、戦線離脱、そして勝利』
2008年のカールソンの戦績は見事でした。マスターズ8位タイ、全米オープン4位タイ、全英オープン7位タイ、全米プロ20位タイというメジャーでの成績が安定感を物語ります。秋には2回連続2度目の出場となったライダーカップをはさんで、2試合連続優勝も遂げ、23戦2勝2位が2回、3位4回でトップテンは12回。史上初のスウェーデン人賞金王となり、さらに、08年末のワールドカップでもステンソンと組んで優勝したことで、スポーツ王国スウェーデンのアスリート・オブザイヤーに選ばれて輝かしい一年を終えました。
2008年ワールドカップ
「私は長い間、“うまく行かずに憤然としているゴルファー”でした。でも、ゴルフをすることに喜びを見いだしたんです」と、年初の受賞式で喜びを語っていたカールソンは、まさにキャリアの絶頂を迎えていたわけですが、翌2009年の年初に左目の視力低下に気づきます。
2月は試合に出ず、WGC(世界ゴルフ選手権)とマスターズ、プレイヤーズに出てヨーロッパに戻り、前年に勝ち損なったウエントワースでのBMWPGA選手権とヨーロピアンオープンに出たあと、翌週のウエールズ・オープンを土壇場で棄権。視野が暗く、遠近感がとりづらくなっていたのを感じて専門医に相談したところ、左目の網膜の下に水がたまっていると言われます。治癒まで半年ほど、そのままプレイをしていてもいいが長引くかもしれないとの診断。

ラフにある球が沈んでいるのか浮いているのか、距離感がつかみづらいという症状もあり、プレイは困難でした。原因は不明。これまでの症例からはストレスが大きな要素となっているかもしれないという医師の言葉にカールソンは意を決し、6月から丸4か月間の休暇を取ります。
ゴルフはできないわけではなく、地元スウェーデン、マルメでのSASマスターズではプロアマ戦だけ参加することもありましたが、もっぱら家族と過ごす休養に努めました。

復帰戦は10月のダンヒル・リンクス選手権でディフェンディング・チャンピオンとしての出場でしたが、カット落ち。さらに翌々週のポルトガル・マスターズは、2年連続惜敗の相性のいいコースでありながら週末に残れませんでした。

「きつかったですね。それほど悪くなっていないことを期待していたんです。でも、やはりあれだけ長く休むと、復帰してもきびしいわけです。いやになりましたよ。休んでいる間も、自分のゴルフはどういう調子がわからなかったし、復帰してひどいプレイをして、休むときより遥かに悪い状態になっているように感じました。だから、11月頃は一番きつかった」

復帰して5戦目の香港オープンがターニングポイントでした。
1打足らずのカット落ちでしたが、そこで手応えを感じたカールソンは翌週、宮崎のダンロップ・フェニックスで最終日に65をたたき出します。エドアルド・モリナーリとのプレイオフに破れはしたが、失ったものを取り戻しつつありました。
さらに次の週にはステンソンと組んで中国、深?でのワールドカップで2位タイ、さらにその足で南アフリカに飛び、ネッドバンク・チャレンジで9位に入ります。そして、2010年年初のカタールマスターズで勝ち抜いてみせたのでした。

『“やる気過剰”からの脱皮』
賞金王に登り詰めた2008年、失意の2009年、そして2010年のカタールマスターズでの勝利は、カールソンの強さを証明したように思われます。
競技力の差はほとんどなく、その週の調子で勝敗が決まる世界のトップレベルの試合で必要な強さ。それは、かねてからカールソン自身が気づき、それによって賞金王を実現させたカールソンの強さでもありました。
すなわち、「落ち着け、入れ込みすぎるな、鼻息を荒くしすぎるな」ということ。

レース・トゥ・ドバイ初代チャンピオン「リー・ウェストウッド」2009年にウエストウッドが大活躍を演じ、新機軸のレース・トゥー・ドバイの初代チャンピオンになるのを横目で見ていたカールソンは残念だったろうし、プロゴルファーにとっての生命線とも言える目の故障は不安だったでしょうが、失望はしませんでした。
一年を棒に振ったことで、一大奮起してこの新たなシーズンに臨んだのか、という記者の質問には次のように答えた。

「やる気はこれ以上必要ないと思うのです。おそらく私の場合は、そこに問題があるんだと思う。私の場合はそのやる気を抑えなければいけない。ときとして過剰になってしまうんです。だからやる気の問題ではない。私にはもっと・・・、なんというか、今年は復帰して毎日、いいラウンドを重ねて、それを続けていくことに専念しようとしたんです。その結果はどうなるかわからない。言ってみれば依然としてそれは、なんというか、いま私が一番うれしいことなんです。勝つことではないんですよ、実際。いえ、勝つのは素晴らしいことですよ、でも、4日間、ほんとにいいラウンドを重ねること、これこそが一番満足できることなんです」

『戦い続ける力』
カールソンが賞金王になった翌年から、高額ボーナスの用意された新たな賞金王レース“レース・トゥー・ドバイ”が始まりましたが、そのことを問われたカールソンはお金じゃないと断言。

ロバート・カールソン「賞金王になるならいつだっていいですよ、御心配なく。でも今週は、少しだけ振り返りました。いえ、去年ウエストウッドがやったことを思っていたんです。どれだけ彼が去年、いいプレイをしていたかってことをね。そして自分のことを思い出しましたよ。2年前には私も同じことをやったんだと。誰でも、賞金王になるというのは素晴らしいことです。最高の一年になったということですからね。

「自分がそうしたうちの一人であることを思えば、うれしい。いつでも思い出して確かめられるのはいいものです。 ボーナスがなかったことをうらやむなんて、ありえません。ゴルフにはなんの関係もないんです。勝てたら、あるいは上位に入れたら、どんな試合でも本当にうれしい。そのために懸命に努力して、つねにそこに行こうとしているんです。私がゴルフをするのはそのためです。お金のためじゃないんです。」

若い連中がしかめ面して鼻息を荒くしているのは、それはそれで好ましい。ただ、やる気とか根性とか言ってるうちは、見過ごすもの、見えないものも多い気がします。

「ベリ、ベリ、ハピィ!」

カールソンが連発していたのは、印象的でした。

*1991年に欧ツアーでデビューして20年めの2010年は最終戦でイアン・ポールターを退けてキャリア11勝。スウェーデン選手として最多勝。翌2011年から米PGAツアーに参入して、何度か優勝争いを重ね、ウエストウッドに惜敗もありました。
2012年は振るわず、しかしQスクールで実力を発揮してツアーカードを取り直し、2013年も同じシナリオを狙ったが叶わず。2014年は欧ツアー中心に戦うことになるようです。 (小松直行)

 

?小松の小耳?
・アブダビのアダム・スコットの別荘、スコットと1ラウンドできる特典つきで売り出し中:ペルシャ湾岸最初の海辺のコースサーディヤットビーチGC(ゲイリー・プレイヤー設計)にあるアダム・スコットの別荘が売りに出ている。メイド用の二人部屋、運転手控え室つき。スコットは2008年に購入していながら、一度も滞在しなかったらしい。購入者はスコットとゴルフを一緒に1ラウンドのプレイができるという条件で、売値はおよそ6億8700万円。

・2013年欧ショットオブザイヤーに物申す!:2013年の欧ツアーで年間最高のショットは、www.europeantour.comを通じた一般投票で62.63%を獲得し、ヘンリク・ステンソンの最終戦最終日最終ホール、パー5の2打目を3Wでべたピンに寄せたショットが選ばれた。目くるめくようなステンソンの一年を締めくくるにふさわしい象徴的なショットでもあったが、英大衆紙デイリーミラーは異議を唱えている。1月20日付の記事の中で、「本人はあのショットはひっかけたと言っていたじゃないか。あのときすでに勝負はついていたわけだし・・・」とした上で、「最高の一打というなら、ジャスティン・ローズ。メリオンでの全米オープン最終日、最終ホールでの4番アイアンであるべきだ」とデレク・ローレンソン記者。「勝負をかけたショットだった。そして、ローズのこれまでの半生を注ぎ込んだ渾身の一打だったはずだ。球はピンをめがけて飛び、止まったのは10m奥だったけれども、メリオンのグリーンの硬さはドバイとは違う」。投票ではローズの一打は9.58%の得票にとどまった。

・欧ツアー・ファイナルシリーズ出場資格規定、依然、審議中:先週のアブダビではトーナメントコミッティー(選手役員会)が開かれて、ファイナルシリーズ4戦と最終戦の位置づけについて話し合われながら、これといった結論は出ず、審議は継続される模様。ファイナルシリーズに出場しなければ最終戦に出られないという規定を見直すべきだという声が高まっていた。

・「パブロは彼らにつけを払わせた」:先週のアブダビではローリー・マキロイが二日目に修理地扱いの区域からの救済措置を誤って2罰打。ミケルソンは最終日のバックナインでブッシュの中から2度打ちとアンプレでトリプル。ふたりは結局一打差でララサバルに優勝をもって行かれた。アラブ首長国連邦の翌朝のスポーツ新聞の見出しには「PABLO MAKES THEM PAY…(パブロは彼らにつけを払わせた)」。一方、ミケルソンのほうは悔しがりながらも、楽しめる要素を提供したという意味では満足している様子。確かに、トリプルボギー直後にバーディーを重ね、ひとつ前の組を行くララサバルから“最終ホールでバーディーを取らなければ”という勇壮な気持ちを引き出したのはさすがだった。
資料:http://www.golfbytourmiss.com/category/news/

・タイガー設計の初コース、今秋開場:タイガー・ウッズが初めて設計を手がけているコースが今年の秋にオープンの見通し。先週USAトゥデイ紙が伝えたところによると、メキシコのバハ・カリフォルニア半島先端部にあるエル・カルドナル。7,401ヤード、パー71。内陸コースで、同じ開発区にはすでにデイビス・ラブ三世設計のディアマンテ・デューンズがある。ウッズはすでに現地に家を持ち、これまで6度通い、完成までにさらに何度か赴く予定。ディアマンテは数百万ドルの別荘の立ち並ぶ高級リゾートとして開発され、広さ10エイカーのまるで湖のようなプールも売り物。コンドミニアムとホテルも建設予定。

 

[画像は全て©Getty Images]

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