ニュース・コラム

欧州男子

小松直行の週刊オフチューブ

2014年10月28日(火)午前11:54

LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、ゴルフ最新ニュースをピックアップ。小松さんならではの視点からゴルフ界の最新動向をお届けします!

目次:
BMW PGAチャンピオンシップ
歴代勝者の肖像:P・ケイシー(2009)
小松の小耳:ポールターの腰痛、傷心のマキロイ、ヒメネスはオラサバルのインスピレーション

BMWPGAチャンピオンシップ
ウエントワースクラブ5月、イングランドの一番いい季節にヨーロッパの精鋭たちの集う伝統の一戦。「メリー、イングラン!」と私は高らかにお祝いします。欧ツアーの旗艦イベントたるこの試合、今年は還暦を迎えたのですね。
1955年ヨークシャー州ハローゲートのパナルGCで第一回が開催されて以来60回目。当初はイギリス、アイルランドのプロに限定されていたこの試合は、1969年に初のオープン試合となり、1972年の欧ツアー発足を経て、1984年以来、ロンドンのウエントワースクラブが開催コースとして行われてきました(1972-74年にもウエントワース開催)。

150人のフィールドには今季欧ツアー優勝者17名を含め、ツアー優勝者96人(合計434勝)、メジャー勝者10人(18勝)、欧賞金王8人(13回)、世界ランキング10位までから4人(1位経験者5人を含む)が顔を揃えました。賞金総額は去年と同額ながら過去最高の475万ユーロ(約6億5700万円)です。
プロフェッショナルゴルファーによる世界最古の協会組織として1901年に設立された「The PGA」の年に一度のチャンピオンシップとして始まったこの試合は、いまもPGA理事会のノミネートによってPGA7地区から10人のPGAメンバーが出場します。

川村昌弘選手【BMW PGAチャンピオンシップ放送日時】
2014年05月22日(木)午後6:00?深夜1:00
2014年05月23日(金)前半:午後6:00?10:00
2014年05月23日(金)後半:午後10:30?深夜1:00
2014年05月24日(土)午後8:30?深夜1:30
2014年05月25日(日)前半:午後8:30?10:00
2014年05月25日(日)後半:午後11:00?深夜1:30
(※最大延長午前4:00まで)

*川村昌弘選手がスポンサー推薦で出場。アジア3連戦を週末まで戦ってR2D(レーストゥードバイ;欧賞金ランキング)153位につけています。今週の大舞台で獲得額を上乗せして、来季の欧ツアー年間出場権を確実なものにしたいところ。アーリーラウンドはイングランドの二人、アンソニー・ウォール、ジョン・パリーと回ります。

過去大会勝者の肖像
真面目:ポール・ケイシー(2009年)
ポール ケイシー「この試合を、私は子どもの頃から見て育ったんです。ちょっと奇妙な感じがします。私はここへ来ては、打たれた球が頭の上を飛んでいくときに、空気を切り裂くような音を立てるのを聞いていたのに、いまやロープの反対側にいるんですから」
2009年5月24日、BMWPGAチャンピオンシップに勝ったポール・ケイシーはそう言った。少年の頃に観戦に来て、信じられないようなショットで林の中から脱出するバレステロスや、15番で見事にカットショットを操るファルドや、優勝トロフィーをグリーン上に落としてしまったランガーを見つめては、ゴルフへの情熱をたぎらせていたこのウエントワースで勝ったことは感慨ひとしおのようだった。

優勝を争ったロス・フィッシャーとケイシーはともにまじめで、エリート臭さがない。彼らと違って裕福な家庭に生まれ、何の不自由も無いままにジュニアゴルフからプロに上がって来た若手には、あまり窺われない役割意識というか、ある種の倫理観を感じる。ともに、ロンドン近郊の名門クラブが設けているジュニアメンバーシップ制度の卒業生ということに由来しているのかもしれない。フィッシャーは大会会場のウエントワースの、ケイシーはほど近いフォックスヒルズ・クラブのジュニア育成基金の助成を受けていた。

ロス フィッシャーウエントワースでは91年に創設された制度で、フィッシャーは13歳だった1994年、父親が新聞広告を見て応募。30人の候補からヘッドプロのバーナード・ギャラカーに選ばれた。ウエントワースクラブは通常なら入会金1万5000ポンド、年会費5500ポンドという高級クラブだが、フィッシャーはメンバーとして扱われ、レッスンを受けた。テニスでも同じ制度がある。ケイシーは10歳のとき、はじめはテニスの方でフォックスヒルズに応募して落選したらしい。翌年、ゴルフで選ばれた4人のうちのひとりとなったのが出発点だった。
「いま私がここに座っていられるのも、子どもの頃に与えられたゴルフ環境のおかげだと感じていますし、今度は私が基金をつくって、まさにそれを与える方に回りたいと思うのです」
試合前日の記者会見でそう語っていたケイシーは、いまも時間が許せば、父親が手伝っているジュニア育成の現場へ出向いて子どもたちに接するようにしているという。

強さと挫折
いざ試合がはじまってからのケイシーの強さは群を抜いていた。ビッグネームたちがこぞってアメリカから戻ってきていたが、みな苦しんでいるように見える中、二日目に首位に立ったまま大きな揺らぎを見せなかった。最終日、ひと組前を行くフィッシャーがチャージをかけてきたが、追いつかれても残りのホールで突き放せるだろうと思わせた。

欧ツアーは2009年シーズンの折り返し地点で、66万ユーロ強の優勝賞金を獲得したケイシーは一気に賞金ランキングのトップに躍り出た。この年は“レース・トゥー・ドバイ"が鳴り物入りで始まっており、ケイシーが初代チャンピオン(賞金王)として、200万ユーロの巨額ボーナスの有力候補に名乗りを上げた感があった。ウエントワースで大きく稼ぐのは初めてではなく、2006年にここで世界マッチプレイに勝ち、当時、ゴルフ史上最高額だった優勝賞金100万ポンド(当時換算約2億円)を手にしたのもケイシーだった。初物に強いという印象があったので、米PGAツアーでも戦っているケイシーの調子がいいとなれば、史上初の欧米同時賞金王となれる可能性すらうかがわせたのだった。

先立つ9回の勝利や3度のライダーカップでの活躍、あるいは、一か月前(4月)にはヒューストンで米ツアー初勝利も達成していたが、2005年には大きなスランプに陥ったこともある。4月のマスターズでは79-78でカット。5月のブリティッシュ・マスターズでは80を叩き、さらにこのBMWPGAチャンピオンシップで78-78のカット落ち。6月の全米オープンでは初日に85、二日目のラウンド途上でリタイヤした。7月の全英オープンまでの5試合連続でそういう状態で、「球を前にするとしびれた」と後で語っていた。
そこから、全幅の信頼を寄せるコーチのピーター・コスティスとともに立て直した。球を打ち、体力とメンタルゲームの強化に励んできた。体力強化にはつねに重点を置いている様子で、精神的な強さというのは、体力があってこそものを言うと考えているようだった。
「アメリカに来ているイングランドの若手は、心地よい自分のコクーン(繭)に収まっていて、野心や覇気がない」いつだったかビージェイ・シンがそう批判したことがあった。そのときケイシーが猛烈に反発していたことを思いだす。
「一度、私とジムへ行ってトレーニングを一緒にしてみるといい。われわれはかなりのハードワークをこなしている。他者には見せないだけだ」
ケイシーを支えているのは、この勤勉さと、そこから生まれる自信なのだろう。この週の優勝でワールド・ランキングが、タイガー・ウッズ、フィル・ミケルソンに次ぐナンバー3となった。いまでこそウエストウッド、ドナルド、マキロイという頂点に登りつめたプレイヤーを出しているが、英国プレイヤーのトップ3は2000年のコリン・モンゴメリー(最高2位、1996年10月)以来のことだった。歴代ではナンバーワンになっているニック・ファルド(1990年)とイアン・ウーズナム(1991年)、3位になったサンディー・ライル(1989年)というメジャーチャンピオンのグループに最初に加わったのはケイシーだったのである。

しかし、すべて順風満帆、というわけには行かなかった。結婚と破局。相次ぐケガ。余暇のスノーボードでの肩の脱臼が極めつけだった。
ようやく去年、アイリッシュオープンで勝って見せたが、強さを取り戻すのが容易でないのは明らかだ。36歳のアスリートなら、そういうこともくぐり抜けなければならない試練なのだろう。その途上にあるケイシーには単なる復活だけでなく、何か新たな達成を狙って欲しいと願うばかりだ。
先週、テキサスで一発のショットから9ホールで27というスコアを見せてくれたことは、その予告編であって欲しい。バイロンネルソンチャンピオンシップのTPCフォーシーズンズ、パー5の7番ホール。2打目は傾斜のかかるつま先上がりのライ、そこからケイシーは4鉄で217ヤードのハイカットを放ち、3mにつけてイーグルをもにして、そこまでの2オーバーをチャラにした。それをきっかけに火を噴くようなプレイが続いた。ファンとしては、かつての強いケイシーが戻ってきたと信じられるようなパフォーマンスだった。今週のウエントワースにケイシーの姿がないのは残念だが、また戻ってきたときには、違うゴルフを見せてくれそうな気もする。

【小松の小耳】
ポールター、ジムで腰痛に:先週水曜日に体力強化のトレーニングをしていて、少し重すぎる負荷をかけたために腰に痛みを覚えたというポールターは木曜日は休んで、金曜日に球をうとうとしたが、まださすような痛みがあって練習を中止。幸い、筋肉の問題だけだと本人は言うが、今週、プレイできたとしても期待できる状態ではないと認めた。

傷心のマキロイ:水曜日、ゴルフファンを驚かせた婚約破棄声明を受けてウエントワースで記者会見に臨んだローリー・マキロイの表情は沈痛で、涙さえにじませながら「いまはゴルフに集中する。正直って、それは非常に困難だろうと思うけど・・・」と搾り出すように言っていた。去年末のプロポーズから、今年予定していた結婚式まで、絵に描いたようなスーパーアスリート二人の幸せなストーリーの急展開に記者からも事情の説明を求められたが、「問題は私にある。週末に結婚式の招待状を発送したとき、まだ自分には結婚の準備はできていないのだと気づいた。キャロラインには幸せになって欲しい。これまで素晴らしい時間をともにすごせたことを感謝している」と言い、あまり多くを語らなかった。不振の一年だった去年末にシドニーで豪オープンに勝ち、シドニー湾を眺めながらプロポーズしたときはあんなにも幸せそうだったのに、決断はさぞやつらかっただろう、という質問が出て、記者会見場はさらに暗くなった。そのとき、ある記者が「少なくとも、君は愛するゴルフコースへ戻ってきたね」と言ってマキロイも、記者たちも笑い、悲壮な雰囲気は少し和らいだ。

ヒメネスはインスピレーション:48歳のホセマリア・オラサバルは50歳のミゲル・アンヘル・ヒメネスがキャリア21勝目を母国スペインのナショナルオープンでものにするのを見て、「精神の高揚するのを感じた」と言った。「いまもそう感じている。私はゴルフを愛しているし、依然として練習が好きだし、それこそ今私のやりたいことでもある。ミゲルはインスピレーションだ」と語った。「いずれ、遅かれ、早かれ、誰か50歳代のプレイヤーがメジャーに勝つだろうと確信している」とも言っていた。

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