ニュース・コラム

欧州男子

小松直行の週刊オフチューブ

2014年11月12日(水)午後1:52

LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、ゴルフ最新ニュースをピックアップ。小松さんならではの視点からゴルフ界の最新動向をお届けします!

目次:
北欧諸国のメジャー、ノルディアマスターズ
歴代勝者の肖像:R・ゴンザレス、またの名は“斧を持つ人"(2009)
小松の小耳:アメリカスカップにタイガー出場、梁津萬が全米オープン出場、アンパンマンの挑戦は続く・・・

【ノルディアマスターズ】
ヘンリック ステンソン今週はスウェーデン、ノルウェー、デンマーク、そしてフィンランド、アイスランドも含めた北欧諸国のメジャーたる試合です。スウェーデンで1973年から1990年まで開催され、ノーマン、バレステロス、ウーズナムらが勝ってきたスカンジナビアンエンタープライズ・オープンという試合が、1991年にスウェーデン・ゴルフ連盟主催となって欧ツアー組み入れられ、3大都市、ストックホルム、ヨーテボリ、マルメでローテーション開催されながら今年で24回目となりました。

今年はマルメ開催。オーレスン海峡を挟んでデンマークのコペンハーゲンと向かい合うマルメは、北緯55度35分で今季最北。舞台はPGA スウェーデン・ナショナル、レイクコース (カイル・フィリップス設計、2009開場、7,390ヤード、パー72)。マルメ中心街から、東南東に直線距離で10km、走れば15kmほどのバラ(Bara)という町にあります。そのあたりは、約1万年前に氷河が後退してできた盆地でコースの標高も25mと低いのですが、広いフェアウエイはうねっていて硬く、木々は少なく、4ホールに絡む池がプレイヤーの挑戦を待っています。
<ノルディアマスターズ放送期日>
2014年06月04日(水) 午後1:30?3:30
2014年06月04日(水) 午後4:00?6:00
2014年06月05日(木) 午後1:30?3:30
2014年06月05日(木) 午後4:00?6:00

*世界ランキング2位のヘンリク・ステンソン出場。米でのメモリアルトーナメントでなく、母国のこの試合を選んだステンソン。2004年、2005年に連続惜敗2位。2005年は豪マーク・ヘンズビーに10m弱を決められてプレイオフになり、負けています。今大会は過去23回で6度、地元スウェーデンのチャンピオンが生まれており、今週、ステンソンも大いにやる気になっている様子。前週のアダム・スコットの優勝もそうですが、ステンソンの迫力あるプレイを見ていると、タイガー・ウッズがいないという事情は説得力を薄れさせているようにも感じます。

過去大会勝者の肖像
信じる心:リカルド・ゴンザレス(2009年)
リカルド ゴンザレス「あのショットでは心臓が止まるかと思いました。林の中にわずかな隙間があって、そこをめがけて打ったんです。グリーンに上がっていくとギャラリーが迎えてくれた。あの温かい声援を、私は忘れることはないでしょう。本当に喜ばしい気持ちでした」

高緯度のスウェーデンの、爽やかな夏の日。国内唯一の欧ツアー公式戦で、人々が楽しみにしている、年に一度のビッグ・イベント。日頃、アメリカに行っているヒーローたちもこぞって帰って来て、欧州の精鋭たちと覇を競う試合だ。

テレビで見ている我々も、画面に映る大きなギャラリーたちのなかに、まぶしいようなプラチナブロンドを見つけるだけで、スウェーデンという小さな国の魅力に憧れと胸の高まりを覚えずにはいられない。いや、それは別として、華やかさと期待の中で、この年(2009年)に19回目を迎えた大会は、南部マルメのバーシェベックG&CCでの開催。コースは距離が伸ばされ、全長7,665ヤード、パー73。欧ツアー史上最長となっていた。この長さのせいなのか、あるいは、59歳のトム・ワトソンの優勝争いで盛り上がった前週の全英オープンの余韻の、冷めやらぬせいなのか。大会は明るい日差しの中で、じつのところ、何かもの足らないような鈍い印象をはらんで進行した。

フィールドには、世界ランキング堂々7位のヘンリク・ステンソンがいたが、まったく振るわず、前年欧賞金王のロバート・カールソンが目の故障で不在。米から大会2勝のイエスパー・パーネビックが里帰り出場し、ディフェンディングチャンピオンのピーター・ハンソンや、ヨハン・エドフォース、ニクラス・ファストら、お国の個性的なプレイヤーはこぞって出ていたが、みな生彩を欠いていた。代わって上位を争ったのは地元マルメ出身の中堅、マーティン・エランドソンとルーキーのオスカー・ヘニンソン。そしてお隣デンマークのイエッペ・フルアール、ウエールズのジェイミー・ドナルドソン、そして1打差首位で迎えた豪のマーカス・フレイザーだった。

フルアールは6月のウエールズオープンで初優勝を遂げていて、勝負が佳境に入れば強いところは証明済み。3打差のトップに立ってバックナインに入ったときには、そのまま勝ち抜けるのかに思われたが、ままならぬショットに連続ボギーが2度来て終わってしまった。23歳のヘニンソンは、前年のQスクールを一次から勝ち上がってファイナルで優勝したツアー史上初のプレイヤーだ。今季はここまで成績を出していなかったが、モデルばりの容貌と思い詰めたようなプレイスタイルで声援を集めていた。35歳のエランドソンはいかにも穏健な外見通りのプレイぶりだったが、結局、ヘニンソンとともに、ここぞというときにスコアを伸ばせずに終わった。
ドナルドソンは最終日に崩れるというこれまでの苦い経験を克服したかのようなバーディー攻勢で、この日21パット。最終組から5組前を5アンダー68で回って、トータル8アンダーのクラブハウスリーダーとなった。フレイザーはこの日が31歳の誕生日。前回の優勝争いは08年末の地元メルボルンでの豪マスターズで、ロッド・パンプリングにプレイオフの末に負けた。そのときは初めての子どもが生まれる直前で、心配事もあって完全に集中できなかった。息子のアーチー君も無事に生まれ、今回は絶好のお膳立てとなったが、77と崩れてしまった。

ゴンザレスは最終組の一つ前を回った。二日目に10アンダーに乗せて単独首位に立ちながら、三日目にはパットが決まらず77で5位に後退し、2打差を追いかける格好だった。 前半はじり貧の前日のような展開を思わせたが、9番でトラブルからバーディーに結びつけるや、パッティングも冴え始め、最後の6ホールで5つのバーディーをもぎ取って、あっというまに2打差をつけて優勝をさらった。名に聞こえる飛ばし屋のゴンザレスは、2001年、2004年にドライビング・ディスタンス部門のNo.1になっている。今週の長いコースではその飛距離と、それを可能にする駆動力がものを言ったともいえるが、突き詰めれば精神力、あるいは信念、といったものが、勝負所で具現した、と言えるかもしれない。

71ホール目、459ヤードあるパー4の17番ではバンカーショットを直接ホールアウトしてのバーディー。最終ホールではティーショットを左に大きく曲げ、林の中から3mもない間隙を狙って9番アイアンで乾坤一擲のアプローチを敢行。見事に2m弱につけ、万雷の拍手に迎えられた。

「今週はとてもいい感じだったんです。私はこのコースが気に入っていました。欧州でプレイするようになったのは20年前ですが、その最初の試合はここスウェーデンだったんです」

リカルト ゴンザレスゴンザレスにとってキャリア4勝目となった。このシーズンはトップテンもなく賞金ランキングは153位に留まっていたのだが、自分を信じて前向きに取り組んで来たそこまでの5年間がようやく報われた。同世代の同胞、アンヘル・カブレラが2勝目のメジャーをものにするなかで、焦りもあったことは想像に難くない。

「きつい年になっていましたが、私は挫けずに、踏ん張って戦い続けました。もしも懸命に努力し、勝てるんだと信じる心を失わなければ、必ず実現するものなんだと、私は思っていました」

初日のリーダーで、週末をゴンザレスと回ったイングランドのリー・スラッタリーが金曜日に、明日はツアー指折りのナイスガイと回るので楽しみだと言っていた。人柄はツアー仲間の認めるところだが、私はその週初めて、ゴンザレスがアルゼンチンに自分の農場を持っていて、そこは経済的に余裕のない10歳から15歳のこどものための教育センター兼ゴルフアカデミーになっているということを知った。“ハンディキャップ・セロ(Handicap Cero)"と名付けられているその農場は、ブエノスアイレスから南600kmほどのところにある。予選敗退で前週の全英オープンに出られなかったゴンザレスは、そこで冬に備えて薪を割り、積み上げる仕事をして過ごしたという。

「トレーニングとリラックスの一石二鳥になりましたよ」 ゴルフを10歳から始めたゴンザレスが、自分のクラブを手に入れたのは14歳。これまで多くのアルゼンチンのプレイヤーがそうであったように、キャディーからプロになったという経歴だ。

「いまや、私は何かお返しをしたいんです。ゴルフの好きな子どもたちにね。だから基金をつくって、自分の農場の名前 (Farm Handicap Cero)にちなんで“ハンディーキャップ・セロ"と名付けた。若いプレイヤーがさらに伸びるように、サポートしているんです。アルゼンチンにはかなりいい才能が出てきています。その一人は私の息子(サンティアゴ)でしてね、まだ11歳ですが、私は時々やられてしまうんですよ・・・」

欧ツアーのアルゼンチン出身者は、勝つと同郷者に夕食をふるまうのが習いだそうで、日曜日のマルメの町ではキャディーたちも含め、陽気なスペイン語の飛び交う宴が張られたことだろう。プラチナブロンドを期待していた当方は、髭もじゃのチャンピオンの鮮やかな勝ち抜け方に唖然としてしまったが、喜んでディナーをおごるよと言うゴンザレスの人のよさそうな笑顔には、何やら納得してしまった。

それにしても、欧ツアー屈指の飛ばし屋が“薪割り"とは、なにやら昔の熱血スポ根ものの秘密特訓めいている。どうやらこのエピソードには皆、インパクトを受けたようだった。ゴンザレスの先輩であるエドアルド・ロメロには“エル・ガト(猫)"、アンヘル・カブレラには“エル・パト(あひる)"というニックネームがあるが、「ゴンザレスにも晴れて呼び名がついた」と欧ツアー公式ウエッブサイトでは伝えている。

"El Hombre del Hacha(エル・オンブレ・デラッチャ)"、ずばり、「木こり」である。


資料:
1)大会公式インタビュー・スクリプト
2)欧ツアー公式ウエッブサイト:http://www.europeantour.com/
3)FINE FINISH GIVES GONZALEZ VICTORY: Mark Garrod, Press Association Sport Golf Correspondent

【小松の小耳】
アメリカスカップにタイガー出場:10月にアルゼンチンで行われるラテンアメリカ国別対抗戦“アメリカスカップ"にタイガー・ウッズとマット・クーチャーが米国代表として出場することが明らかになった。アメリカスカップは全34カ国の代表チームが出場。うち4カ国は招待される予定で、米国はそのうちのひとつ。ウッズは2000年にワールドカップでアルゼンチンを訪れている。「楽しい思い出がある。マットと二人で国のために勝ちたいと思っている。もちろんアンヘル(カブレラ)もそうだろうが、勝ち抜いて見せたい」とメッセージを寄せた。

リヤン・ウエンチョンが全米オープン出場を決める:月曜日に日本とイングランドで行われた全米オープンのセクショナル予選では合計20名が本戦出場を決めた。日本での6名では中国のリャン・ウエンチョン(梁津萬、35歳)がトップだった。リャン選手は6回目の予選挑戦ではじめての突破。これで中国人として初めて4つのメジャーにすべて出場することになる。2010年には全米プロで8位タイに入り、すでに実力を覗かせている。
アンパンマンの挑戦は続く・・・:BMWPGAチャンピオンシップでマキロイに敗れたシェーン・ローリーは、最終ホールで意地のバーディーを決めて見せたが、翌日の全米オープン予選で、その惜敗をエネルギーに変えて優勝して見せた。ロンドン近郊の名門ウォルトンヒースでの36ホール、105人のフィールドには、6月のパインハースト出場の14枠がかかっていた。ローリーは8アンダーで単独首位。「パットがよかったし、ウエントワースの勢いを持ち込めた。マキロイに負けたのは残念だったけど、これでまた同じ土俵によじ登った。全米オープンが本当に楽しみだ」と語った。

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