欧州男子

小松直行の週刊オフチューブ

2014年12月2日（火）午後2:46

LIVE FROMのMCや欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、ゴルフ最新ニュースをピックアップ。小松さんならではの視点からゴルフ界の最新動向をお届けします！

目次：
1?アルストム・オープン・ド・フランス
2?歴代勝者の肖像：Ｍ・カイマー（2009年）
3?小耳

アルストム・オープン・ド・フランス

大陸欧州でもっとも古く、もっとも賞金額の高い試合です。ナショナルオープンとしても世界6番目に古く、1906年に第一回が開催。第二次大戦後に国際オープン化され、1972年の欧ツアー発足と同時に欧ツアー公式戦となって現在に至ります。108年の歴史。今年は98回目。賞金総額は300万ユーロで、優勝50万は現時点でのR2D（欧ツアー賞金ランキング）29位と同額です。2位でも33万ユーロで50位相当。次週のスコットランド、そして全英オープン、さらにWGCブリジストン招待と全米プロ選手権で、賞金王への可能性もライダーカップ出場も、決まると言って過言ではありません。そうしたビッグイベントへの出場資格を確保しているトップレベルのプレイヤーたちにとっては、ここからが書き入れ時というわけです。

全英オープン出場資格のないプレイヤーには今週と次週のスコティッシュオープンが勝負です。10位タイまでに入ったプレイヤーの中で、資格のない上位3人がホイレイク行きの切符を手にします。

2018年のRC開催コース、ル・ゴルフ・ナショナル
マーティン・カイマー

ル・ゴルフ・ナショナルは1991年からフランスのナショナルオープンのホームとなってきました。1999、2001年を除き24年間で22回目の開催です。パリの南西に32ｋｍ、車で40分、ベルサイユ宮殿近く。オルリー空港から40分。フランス・ゴルフ連盟の直営コースで全45ホール。そのうちのアルバトロスコースが舞台。深いラフが特徴のリンクス風コース。あがり数ホールは水がらみで、スタジアム的設計。詰め掛けたパリのゴルフファンの歓声が響きます。

設計は1997年まで仏ゴルフ連盟会長でもあったユベール・シェズノーと、アメリカのロバート・ボン・ヘギー。1990開場、7,331ヤード、パー71。ボンヘギーと言えば日本でもホウライや河口湖CC、宇部CCをはじめ13コースをレイアウトしているのでおなじみでしょうか。私の勝手な表現ですが、水際の情緒と言いましょうか、目に穏やかで、それはプレイするに危険であるという水際・・・・。

ディフェンディングチャンピオンのグラム・マクドウェルは先々週のアイリッシュオープンで週末にパターが冴えず、6位タイに終わりました。Ｇマックはパリのこのコースを自分に向いていると言っています。

「ライダーカップの舞台としてもふさわしい。ベルサイユ宮殿やトリアノン離宮あたりに泊まって、おいしい食事ともてなしにあずかれるなんて、これ以上の開催地はありませんよ。コースも、とくに上がりの4、5ホールは劇場のようで、リスクを負って果敢なショットを成功させられるかどうか見物になるでしょう。そして最終ホール。欧ツアーの舞台で、ここより素晴らしいホールはありえないだろうと思う。数万人の観客が見守る勝負の雰囲気を創造しただけでワクワクします」

フレンチゴルフ栄光の時代、もうそこまで

ビクター・デュビソンやアレクサンデル・レビの優勝は、フランスが待ち望んでいる栄光の時代をますます期待させています。すでにその計画は2011年に確定していました。2018年のRC開催地にパリが選ばれたのです。コースはもちろんこのル・ゴルフ・ナショナル。4年後、世界のゴルフ界最大のショーでのフランス勢の活躍が今から楽しみです。

<アルストム・オープン・ド・フランス放送期日>
2014年07月04日（金）午前8：00?10：00
2014年07月05日（土）午前8：00?10：00
2014年07月06日（日）午前8：00?10：00
2014年07月07日（月）午後11：00?深夜1：00

＊マーティン・カイマー出場です！
＊＊マクドウェルは2018年ライダーカップでは二人のフランスの選手が入るんじゃないかと思うと言いました。
Ｇマックはアイリッシュオープンのときに一緒に回ったホマン・ワテルを「すごい潜在力を持っている」と評していました。
＊＊＊フランス勢は２８人が出場です。

アウトバーンで祝いますよ歴代勝者の肖像：マーティン・カイマー(ドイツ) 2009年7月5日：オープン・ド・フランス、ル・ゴルフ・ナショナル、パリ Martin KAYMER(GER);Open de France ALSTOM　05 Jul, 2009, Le Golf National, Paris, France 「最後の数ホールでは、いつも通り落ち着いている、とは言えなかったです。14番ホールから17番まで、少し緊張してました。でもプレイオフになってからは、焦る気持ちはなくなって、すごくリラックスしていたので、それが最後のパットが決まることにつながったんだろうと思います。ラウンドの終盤は冴えませんでしたが、プレイオフでは取り戻しましたね」
「ボクは車で来ているので、今夜、ドイツへ帰るんです．アウトバーンを走りながらお祝いしますよ！」フランスのナショナル・オープンは、例年、パリのル・ゴルフ・ナショナルでの開催。勝ったマーティン・カイマーは、父とともにデュッセルドルフの実家から自分の車で来ていて、後日談だが帰路、ガソリン補給のついでにビールを買って、アウトバーンを飛ばしながら祝杯をあげたということだ。むろん運転は彼自身で、飲んだのは父だけだったろうと想像するが、それにしても、このドイツの24歳（09年当時）がプロ転向してから優勝を重ねるさまは、まさにアウトバーンを高性能ドイツ車で突っ走っているように凄まじい。アマチュア時代もそれなりに優秀な戦績を残してはいるが、鳴り物入りでプロになったN・ドハティーやR・マクロイとは違って、いわば、欧ツアーに突如として彗星のように現れ、破竹の勢いではやくも世界のトップ・プレイヤーになった、という常套句的表現がふさわしいだろう。 20歳だった2005年にQスクールに挑戦。1次をトップ通過、2次9位、11月中旬のファイナルでは142位に終わるが、この段階でプロ転向。12月28日の誕生日で21歳になって、翌 2006年は3部ツアー（サテライトツアー）の、ドイツを中心に周辺国を巡るルノーEDPツアーでプロとしてのスタートを切った。計14戦に出たが、5月末から8月半ばまでの7試合で3連勝含む5勝をあげ、ほかに2位2回、3位2回。7月中旬のドイツでのグート・ヴィンタブローク・クラシック（Gut Winterbrook CL）でセカンド・ラウンドにノーボギー60（パー72）、6月にはハーブスバーグ・クラシック（Habsberg CL）でセカンド・ラウンドに59（パー72）をたたき出している。竹は割れれば止めようがない。2006年には、ドイツ開催のチャレンジツアー（欧ツアーの2部ツアー）の試合に出場権を得ていきなり優勝。以後、チャレンジツアーで合計8試合、2勝、2位1回、3位2回、4位1回で、残りは12Tと13位。賞金ランキング4位で卒業して2007年の欧ツアー出場権をとった。 2007年6月初めのウエールズ・オープンではトップタイで最終日を迎え、最終組で回るが伸ばせず14位タイに終わる。8月のスカンジナビアン・マスターズでも首位に並んで最終日に入ったが、勝負のかかる最終18番でグリーンをはずし、寄せに失敗して痛恨のダブルボギーを喫し、2位に甘んじた。しかし、ルーキーとしてトップテンに5回入り、最終戦ボルボ・マスターズでも6位になって、合計75万5000ユーロを獲得。オーダー・オブ・メリット41位という見事な成績で新人賞に輝いた。		だれもが初優勝は近いと口々に評した2008年は、カイマーにとって第一戦となった1月17日からのアブダビ・ゴルフ選手権で、初日から首位を独走し、2位に4打差を付けて初優勝をものにした。最終日は74だったが、ステンソンとウエストウッドをしのぎ、ハリントンやカールソンをはじめ欧ツアーの主要なプレイヤーが勢揃いしたフィールドでの見事な完勝だった。 2008年6月には自宅に近いミュンヘンでのBMW国際オープンで、キャリア2勝目をあげた。二日目に首位に立ち、最後はプレイオフだった。ガールフレンドを抱きしめて泣いていた。インタビューではあまり口を開かず、無愛想な印象さえ残した。本人が明かさなかったので報道されなかったのだが、そのときガンで病床にあった彼の母は、その優勝から2週間後に他界した。ミュンヘンでの戦いぶりには、やはりどこかただならぬ気配があったが、キャリア3勝目となった今回のフランスでは、初日に62で飛び出し、最後はウエストウッドとのプレイオフを制した。最終日に1打差の2位から出て、自分が勝つことになっていて、その手続きを踏んでいる、というように見えるくらいに、落ち着きがあった。 65で追いついてプレイオフにもち込んだウエストウッドもさすがだったのだ。しかし、プレイオフではアプローチを紙一重で池に落とし、ドロップゾーンから4打目を打って9m のボギーパットを残した。カイマーは2パットで勝ちという場面になり、それを1ストロークで決めて結着した。冒頭は、ナーバスになったか、という問いへの答えである。「変に思うかもしれないけど、僕はプレッシャーを感じないんです。チャレンジは楽しい」初優勝から年間2勝を遂げた2008年、その年のライダーカップ出場も狙える位置にあったときに、新聞のインタビューでそう答えていた。残念ながら選ばれなかったが、次の 2010年は確実だろう。スーパースターの神話的エピソードとなりそうだから、2006年6月に59を出した時の逸話も紹介しておく。1イーグル、12バーディー、1ボギーの31/28＝59で回っていながら、スコア提出時まで59で回ったことに気づかなかったという話だ。無我夢中とはこのことだろう。それでいて、カイマーのプレイぶりには、死に物狂いの悲壮感もなければ、思い詰めたような懸命さもうかがえない。プレイに没頭してスコアも忘れるとは、ある種の天才的境地ではなかろうか。このオープン・ド・フランスの前週がBMW国際オープンだった。ディフェンディング・チャンピオンであるカイマーは2打余分でカット落ちしていた。その翌週の優勝だから、やはり天才的閃きのなせるわざかもしれない（小松直行）。

小松の小耳

2017年全英オープンはロイヤル・バークデール、2018年はカーヌスティー：R&Aは水曜日、全英オープンの開催予定コースを発表。来年のセントアンドルーズ・オールドコース、2016年のロイヤルトゥルーンに続く舞台が決まった。

2015年全英オープンにトム・ワトソン出場：全英オープンに５勝しているトム・ワトソンに対して、Ｒ＆Ａは2015年のオールドコースでの全英オープンに特別推薦出場枠を適用すると発表。2009年のターンベリーでの全英オープンで、当時59歳だったトム・ワトソンはプレイオフの末に惜敗。その成績による出場資格が今年で切れる。2015年はワトソンが全英オープンに初優勝してから40周年にあたる。「這ってでもセントアンドルーズへ出向くつもりだ」とワトソン。

タイガーは21倍、マキロイ13倍：再来週の全英オープンの優勝者として、英ブックメイカーはタイガーに20の１、マーティン・カイマーとヘンリク・ステンソンに15の１、ローリー・マキロイとアダム・スコットには12の１というオッズをつけた。ＤＣのフィル・ミケルソンには20の１ジェイソン・デイ、ジャスティン・ローズにも同じ。松山英樹は50の１。

ゴルフ規則裁定３３-６/３！：先週のBMW国際オープンで、ファブリツィオ・ザノッティが初優勝を遂げたことは喜ばしい限りでした。プレイオフで、最後に残ったヘンリク・ステンソンとザノッティーが演じたパフォーマンスは対照的。280ヤードと短い設定だったパー4の17番で、先にグリーンを狙ってティーショットを打ったステンソンは水に入れてしまいます。ザノッティーは安全にグリーン手前花道まで運び、そこから奥のピンに寄せて2ｍのバーディーパットを残していました。ステンソンは罰打を払ったあとの3打目をグリーンの向こうのバンカーに落とし、そこからのホールアウトを狙った４打めはホールの内側をかすめながら行き過ぎてしまいました。ステンソンは球に歩み寄り、池に向かって球をパターで打ち捨て、ザノッティーに握手を求めて決着となりました。つまり、ザノッティーのバーディーをコンシードしたということでした。ストロークプレイのプレイオフで競技者が自らの負けを認める、つまりコンシードすると言うことは、ゴルフ規則裁定３３-６/３で競技会運営上の約束事として認められていると、欧ツアーチーフレフリーのジョン・パラモ氏。私はゴルフ専門アナウンサーでありながら、いままで知りませんでした。試合後にパラモ氏に聞いて教えてもらったという次第で、お恥ずかしい話です。一方で、後味の悪さも感じました。ステンソンの負け際の態度はどうだったでしょう。常識、慣習、文化の差があるにしても、ステンソンが独特の無表情で球を池に捨てるふてくされた行為は、子どもに見せたくない恥ずかしい行為だと感じました。