欧州ツアー中継の実況を担当している小松直行アナウンサーが、欧州ツアーの最新動向をお届け！

目次：
・イタリアオープン
・イタリアンゴルフの時代
・小松の小耳

〔第71回イタリアオープン・プレゼンテッドバイ・ダミアーニ〕
伝統の一戦、という試合は数ある欧ツアーにあって、イタリアオープンも1925年の創設以来71回目。欧ツアーが1971年に発足したと同時に公式戦となって43回目。インターナショナルな欧ツアーを代表する試合のひとつであります。
舞台は今年もトリノ。中心街から北西30分。森林に囲まれ、背景にはアルプスの峰。ラ・マンドリアパークという豊かな森林の中にあるトリノゴルフクラブ。比較的平坦で成熟した林に縁取られたパークランドコースです。

何といっても2年に一度の欧米対抗戦ライダーカップの出場のかかる最後の試合です。
といってもこの段階まで来ると、自力で出場を決められる９人に入れるかどうかがかかっているのは、スコットランドのスティーブン・ギャラカーだけ。いま９人目にいるのはグラム・マクドウェルですが、マクドウェルはお子さんが生まれて今週の米ＰＧＡツアーはお休みなので、ギャラカーは今週２位か二人だけの２Ｔに入ればＧマックを抜くことができるのです。

ギャラカーは欧州ゴルフ界では有名な名前。
欧ツアー１１勝、ライダーカップに８回出場、その後、キャプテンとして３度、欧州サイドを率いたベーナード・ギャラカーは彼のおじに当たります。プロになったときから大きな目標のひとつだったライダーカップ出場がかなうかもしれないというチャンスに、スティーブン・ギャラカーは７月からのこの８週間は１週休みを取っただけで連戦。その最後のチャレンジとなります。
先週のチェコでジェイミー・ドナルドソンが優勝して初出場を勝ち取ったように、今週はギャラカーがプレッシャーのかかる中で強さを見せてくれることを期待しましょう。

【第71回イタリアオープン・プレゼンテッドバイ・ダミアーニ 放送日時】
１日目：８月２８日（木）午後10：30?深夜1：30
２日目：８月２９日（金）午後10：30?深夜1：30
３日目：８月３０日（土）午後10：30?深夜0：30
最終日：８月３１日（日）午後11：00?深夜1：00

※ライダーカップは両サイド１２名ずつのプレイヤーで戦われます。
そのうちそれぞれ３人はキャプテンが選ぶ「キャプテンピック」。いま、欧サイドで出場の決まっていない実力者にはルーク・ドナルド、イアン・ポールター、リー・ウエストウッド、ミゲル・アンヘル・ヒメネス。ウエストウッドは今季の不調から米ＰＧＡツアーのプレイオフも脱落しており、経験と実力は申し分なくとも厳しいかもしれません。
ドナルドとポールターは今週のドイツバンクチャンピオンシップでいいところを見せられるかどうか。
ヒメネスは今季２勝していますが、今週はイタリアに出ていませんのでチャンスはないでしょう。

※イタリアオープンできらめくような強さを見せてキャプテンのポール・マギンリーに強くアピールできるかもしれないのは、オランダのヨースト・ラウテン、地元のフランチェスコ・モリナーリ、オーストリアのバーント・ビースバーガー、さらには先々週のデンマークで勝ち抜いたマーク・ウォーレン。
ウォーレンはスコットランド出身者として初出場を切望しているでしょうし、今回のライダーカップの舞台となるグレンイーグルスで７年前に優勝しているので、実力をアピールできれば有力候補としてマギンリーを悩ますことになるでしょう。

※キャプテンピックは9月2日(火)、ロンドン近郊ウエントワース・クラブのボールルームで発表される予定。

〔イタリアンゴルフの時代〕
２００９年の秋、宮崎でエドアルド・モリナーリが勝ち、翌週のワールドカップで弟のフランチェスコと組んでイタリアに初優勝をもたらしたあたりから、イタリアンゴルフの躍進の時代がはっきりしました。
その年の全英アマチュア選手権では１６歳のマテオ・マナッセロが史上最年少チャンピオンとなり、２０１０年にプロ転向するやスペインで初優勝してしまったときには「ママミア！（驚いたな）」でしたが、この３人は、アマチュアもプロも一手に統轄するイタリアゴルフ連盟のゴルフ振興・競技力向上戦略の申し子であり、さらなる起爆剤なのです。

イタリアゴルフ連盟は、フランコ・キメンティ会長の旗ふりで２００７年に「テセラミント・リベロ（無料入会）」という制度を導入しました。登録に75ユーロ（約８千円）、未成年は20ユーロを支払えば、特定のクラブのメンバーにならずとも連盟会員になれるというもの。イタリアでは全国２８０コースのほとんどが高額入会金のプライベートですが、連盟会員には特別料金と企画パックが提供されます。
ゴルフを始めようとする者が、これまでは敷居の高かったコースでプレイすることができて、その過程で本当にゴルフは自分に向いているか、クラブに所属して長く続けていけるかどうかを見極めることができるわけです。

イタリアのゴルフ人口の増加率はかつて年3?4％でしたが、テセラミント・リベロ制度発足4年で10％近くに高まり、ゴルフ人口は10万人を超えました。
とくにジュニアが8年間で倍増。教育省の後押しも得て、全国150クラブと共同で地元の小・中学校のスポーツ活動の時間にゴルフに接する機会を提供する施策も奏功しています。

もうひとつ。
世界的トレンドの最先端を行くのはプロ支援。駆け出しのプロが自立できるまで、試合の出場経費は無制限で連盟が負担するのです。
特徴的なのはボーナスで、好戦績と年間出場権の維持、ワールドカップや欧米対抗戦出場に対して、その重要度に応じた報償金を出す、というもの。金額は明かされていませんが、そこにはプロの活躍こそゴルフ振興の必須条件だという認識があります。
連盟は経験豊かな元ツアープロを専従スタッフに雇用し、毎年一人を欧ツアーに送り込むこと、世界ランキング100位に入るプレイヤーを増やすことを目標に掲げています
（小松直行）

〔小松の小耳〕
「ハトの群れに猫を投げ込んで欲しい」とＧマック：スティーブン・ギャラカーはキャリア３勝と少ないように感じるが、今年もビッグネームの集まったドバイで連覇を果たしていて実力は申し分ないプレイヤー。
初優勝は１０年前のダンヒルリンクス選手権だった。そのときはプレイオフにもつれ込んでの勝利だったが、その相手は誰あろうＧマック。ギャラカーが１ホール目に見事なバーディーにして勝った。最後にマクドウェルとギャラカーの一騎打ちとなれば今度も勝つのはギャラカー、となるのかどうか。
マクドウェルは先週のバークレイズで出場を確定させてしまって、ギャラカーの自力出場のチャンスを消すことができたのだが、最終日に振るわず４０位タイ。「健闘を祈るよ」とギャラカーにエールを送った。
「スティービーにはイタリアでやり遂げて欲しいと願ってます。そうなれば大変な騒ぎになってしまうでしょうけど、彼はそれだけの成績を残してきているわけですからね」
そういったマクドウェルだが、Ｌ・ドナルド、Ｉ・ポールター、Ｌ・ウエストウッドとともにマギンリーの候補となったとしても、それなりの自信があるはずだ。

Ｇマック、ホライゾンスポーツを離脱：グラム・マクドウェルと、彼のマネジメント会社は両者の契約を解消すると共同発表。理由は明らかにされていない。
Ｇマックは２００７年にマネジメント契約し、その後２０１０年の全米オープン優勝や３度のライダーカップ出場を果たした。ダブリンを拠点とするホライゾンスポーツ・マネジメントグループには、これまでマイケル・ホウイ、ガレス・メイビン、そしてローリー・マキロイが所属していたが、すでに袂を分かっている。
マキロイとの関係解消は訴訟沙汰となり、この秋にまだ公判を控えている。欧ツアープレイヤーでホライゾンスポーツに残っているのはシェーン・ローリーとロス・フィッシャーの二人となった。

タイガー・ウッズの次のコーチは誰？：年末まで競技出場はしないタイガー・ウッズは、２０１０年以来のコーチであるショーン・フォーリーとの関係を解消し、いまのところ新しいコーチにつく予定はないと自身のウェブサイトで発表した。以下は、タイガーのこれまでのコーチとその間の勝利数。