PGAツアーで新たに導入された「Strokes Gained Tee-to-Green(ストローク・ゲインド・ティー・トゥ・グリーン)」とは?
2016年3月17日(木)午後3:22
PGAツアーでは昨年のプレーオフシリーズから「ストロークゲインドティートゥグリーン」と「トータルストロークゲインド」が公式スタッツとして採用されることになりました。これが解れば、あなたも明日からPGAツアー通です!
これまでツアーでは、ある選手のショットがどれだけ良い状態かを知りたかったら「フェアウェイキープ率」や「パーオン率」を見るしかありませんでした。正確なショットを打てる選手は「フェアウェイキープ率」が高く「パーオン率」が高いはずです。
しかし昨年2013年シーズンの「フェアウェイキープ率」や「パーオン率」の順位表を見てみても、昨年賞金王になったタイガー・ウッズや当時の世界ランク1位のアダム・スコットの名前が見当たりません。スコアメイクを決定付けると言われる「トータルパッティング」を見てみても、2人の名前はありません。
それもそのはず、ウッズもスコットもメジャー大会などタフなコンディションで戦わなければならない試合ばかり、16試合ずつしか出場していません。フェアウェイは狭くグリーンは硬いコースばかりでプレイしているので「フェアウェイヒット率」や「パーオン率」はどうしても低くなります。速いグリーンばかりですから「トータルパッティング」も当然良い数字が出ません。これでは本当にゴルフが上手な選手が誰なのかわかりません。
そこで《実際のストローク数》ではなく《他の選手とのストローク数比較》を値にすれば、コースの難易度による不公平さが無くなるだろうということで「ストロークゲインド」の概念が生まれました。
今回は「ストロークゲインドティートゥグリーン」、「トータルストロークゲインド」について詳しく紹介します。ちょっとマニアックな情報ですが、これが解ればPGAツアー中継がもっと楽しくなるので、ぜひチェックしてみて下さい。自分のスコアアップに繋がるヒントもあるかもしれません!
「ストローク ゲインド」とは?
ストロークゲインドの定義は「あるコースで、選手がフィールドに対して何ストローク勝った(Gain)か、もしくは劣った(Lost)かの値」。先ずは以前より導入されている「ストロークゲインド パッティング」のおさらいをしてみましょう。
「ストロークゲインドパッティング」とはグリーン上でのパフォーマンスでどれだけストロークゲインしたか、つまりはパッティングのスコアに対する貢献度を表す値となります。
ショットやパッティングはラウンド毎のデータが少なすぎるので、計算には昨年のデータが使われます。昨年実績で、ある難易度のコースのある距離からのパットにツアー平均何ストロークかかったかを計算し、自分のパット数から引くことにより、パッティングのおげで他の選手よりもどれだけ優位にスコアを作ることができたか?が明らかになります。
例えば、2mのパットを決めるツアー平均ストローク数(昨シーズン実績のコース難易度計算込み)が1.5だとします。もしあなたがそのパットを1パットで決めたら「ストロークゲインド」は+0.5となります。2パットだと-0.5、3パットしたら-1.5となります。「パットがどれだけスコアに貢献したか?」とよく言われますが、それはつまり、パットでどれだけ他の選手に勝てたか?ということになります。《コースに勝つ》のではなく《他の選手に勝つ》というところがポイントです。そうすることで難易度の同じくらいのグリーン上での選手のパッティングの上手さが比較できるわけです。
補足になりますが、グリーン上でウェッジを使って打った場合もストロークゲインドパッティングに反映されます。グリーン上のあらゆるパフォーマンスがこのストロークゲインドパッティングのデータに影響します。
「トータル ストローク ゲインド」とは?
フィールドの1ラウンドの平均スコアと自分のスコアを比較して、どれだけ勝っているか(ゲインド)負けているか(ロスト)を計算すると、トータルストロークゲインドが導きだされます。もし選手Aが68をマーク、選手Bが72をマークした場合。フィールドの平均スコアが70だとすると、選手Aのトータルストロークゲインドは+2、つまり選手Aはフィールドよりも2ストローク勝ったことになり、選手Bのトータルストロークゲインドは-2で、選手Bはフィールドよりも2ストローク劣ったことになります。
さて、選手Aはフィールド全体よりも2ストローク勝ったわけですが、その内訳はどうなっているでしょうか?
「ストロークゲインド ティー トゥ グリーン」とは?
ティーショット、アイアンショット、アプローチ、パット、これら全てを合計して、他の選手よりも何ストローク勝ったか?それが「トータルストロークゲインド」でした。「ストロークゲインド ティー トゥ グリーン」とは、コースのグリーン面以外のあらゆる場所でのパフォーマンスにより、どれだけストロークゲインしたか、つまりはショットのスコアに対する貢献度を表す値となります。
計算方法は簡単です。「トータルストロークゲインド」から「ストロークゲインド パッティング」を引いた値が「ストロークゲインド ティー トゥ グリーン」になります。
先の例の選手Aの場合、勝った2ストロークのうち、「ストロークゲインド パッティング」(パットが役に立ったのは2ストロークのうちのどれだけか?)が1だとすると、「ストロークゲインド ティー トゥ グリーン」は「2-1=1」となります。ティーショット、アイアンショット、アプローチショット等で他の選手たちよりも1打稼いて、パットでもう1打稼いだことになります。
現在の「ストロークゲインド」ランクは?
さて「ストロークゲインド」がかなり有効なデータを示してくれることがわかりましたので、現在の「ストロークゲインドティートゥグリーン」と「ストロークゲインドパッティング」のランキングを見てみましょう。
【ストロークゲインドティートゥグリーン ランキング】
1位 ローリー・マキロイ(平均1.993)
2位 セルヒオ・ガルシア(平均1.820)
3位 ジム・ヒューリック(平均1.684)
4位 ジャスティン・ローズ(平均1.505)
5位 アダム・スコット(平均1.503)
6位 松山英樹(平均1.474)
錚々たるショットメーカーの名前が並んでますが、6位に松山英樹の名前があります。このデータは松山選手が世界有数のショットメーカーだということを証明しています。
次に「ストロークゲインドパッティング」を見てみましょう。
【ストロークゲインドパッティング ランキング】
1位 グレアム・マクドウェル(平均0.886)
2位 アーロン・バデリー(平均0.873)
3位 グレッグ・チャーマーズ(平均0.855)
4位 マット・エブリー(平均0.735)
5位 フレディ・ヤコブソン(平均0.705)
156位 松山英樹(平均-0.393)
ストロークゲインドティートゥグリーンのランキングと比較するとワールドランキング上位者があまりいないことがわかります。ストロークゲインドティートゥグリーンで1位のマキロイは平均.273でランク41位となっています。また、松山は平均-0.308でランク151位。いかにショットがスコアメイクに繋がっているかが解りますね。
「ストローク ゲインド」という考え方、そしてその数字が意味するものとは?
ドライバーでフェアウェイキープした260Yのショットも、セカンドで左にひっかけたアイアンショットも、バンカーからのナイスアプローチも、難しい下りのスライスラインも、スコア上では全て同じ一打です。その同じ一打の中からスコアへの貢献度を振り返り、どのショットがゲインしたのか?、ロストしたのか?を考えていくと上達の一歩となるかもしれませんね。
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