“HIS OWN WAY”
2015年8月31日(月)午前11:13
米フロリダ州オーランドより番組制作スタッフが、独自視点でお届けするユニークなゴルフ最新情報!
PGAツアーはマレーシアに舞台を移し、CIMBクラシックが開催されました。
トータル7アンダーで21位につけた松山英樹選手と6アンダーで26位の石川遼選手、日本のエース2人に加え、セルヒオ・ガルシアやフェデックス・カップの覇者、ビリー・ホーシェルらが出場、78人のフィールドでチャンピオンとなったのは2年続けて名乗りを上げたアメリカの31歳、ライアン・ムーア。1年前も54ホールを終えた時点でトータル12アンダーでトップタイだったムーアが優勝、そして去年プレーオフでムーアに倒されたゲーリー・ウッドランドが今年も2位(タイ)という珍しい結末でした。
54ホールを終えてムーアとともにトップに立ったケビン・ナが、フロントナインを4アンダーとし、トータル16アンダー、ムーアが3アンダーで15アンダー、ガルシアも3アンダーで14アンダーで迎えたバックナイン。10番パー5でガルシアのティーショットはカート道ではずみ、パームツリーにひっかかったのか紛失球。ガルシアは5番から9番までで3アンダーの勢いを断たれてしまった形となり、このホールのダブルボギーで事実上優勝争いから後退。ケビン・ナとムーア、ともに刻んだ2人がそれぞれパーとバーディで2人が再びトップタイ。
しかしその後ケビン・ナはボギーとダブルボギーをたたき、18番パーファイブでバーディを奪うも時すでに遅し。ムーアも12番と16番をボギーとしたものの14、15、17番でバーディを取り、3打差で迎えた最終ホールをパーであがり、最終ラウンド67でトータル17アンダー。やはり67と追い上げたウッドランドと70だったケビン・ナ、69のガルシアはいずれも14アンダーでライアン・ムーアの2連覇となりました。
“去年プレーした際、このコースはとにかくボールをインプレーにすること、ボールの落としどころが全てだとシンプルにとらえ、ティショットでは無理をせずパー5でも3打目で自分にぴったりの距離を残すようにした”と言ったムーア。コースマネジメントがもたらした勝利と言えるでしょう。と同時に、ムーアは“I’m a closer”と自分に常に言い聞かせているそうです。最後までしっかりとしめくくることができ、ツアー通算4勝目をマークしたムーアに対し、ガルシアとケビン・ナ(ザ・メモリアル・トーナメントで松山英樹選手とのプレーオフに敗れ2位)は上位で迎えた最終日、またしても優勝につなげられない印象を残してしまいました。
ムーアはアダム・スコットと同じネバダ大ラスベガス校出身で4年生だった2004年、全米アマチュア選手権、全米アマチュア・パブリック・リンクス選手権、ウエスタン・アマチュア、NCAA個人戦、世界アマチュアとアマチュアの栄えあるタイトルをひと夏で獲得。翌2005年出場のマスターズでは13位タイでベストアマチュアに輝き、大器としてプロ転向直後の活躍が期待されました。続くメジャー、今年と同じパインハースト・ナンバー2が舞台の全米オープンで57位タイにつけたあとプロに転向。初優勝は2009年でしたが、その前の3年はいずれも賞金ランクで90位以内につけていました。
2勝目は2012年で3勝目が去年のCIMBクラシック。そして4勝目がタイトル防衛。これで過去4年のうち3年で優勝、2009年以降は賞金ランクで悪くても61位と一度も3桁で終えたことがない31歳のムーアは、まさにキャリアの全盛期を迎えようとしているのかもしれません。
そんなムーアの公式サイトを見るとバイオグラフィーの中に、”Ryan’s always done things his own way..”とあります。
自分が使いたいクラブやウエアにこだわるムーアは、魅力的な金額を提示し契約を申し出たメーカーのオファーを断っていた時代もありました。穏やかな口調のムーアですが、ブレないショットはブレない信念から来ているのでしょう。
先週、偶然日本語放送で加山雄三さんが人生を振り返りながらヒット曲を披露する番組を見ました。
77歳という年齢であの声量に感動したのはもちろんですが、発音もきれいな英語で熱唱したMY WAY・・・強く胸に残りました。 家族と関わった事業が20億円を超える債務を抱え、債権者に土下座した時代があったこと。曲作りに大切なピアノを初めとする楽器も全て失い、どん底を味わったことなど全く知らなかった私は、加山さんからMY WAYの歌詞を教えてもらう形となりました。
日本では、“私には愛する歌があるから 信じたこの道を私は行くだけ すべては心の決めたままに”というフレーズで知られていて、しみじみいい歌だなと思って聞いていましたがオリジナルの歌詞はさらに素晴らしく、何だかいい本に出会った時のような満たされた気持ちになりました。人生の浮き沈みを経験してきた加山さんにぴったりの歌。フランク・シナトラやエルビス・プレスリーも私達には想像できないくらいすごい人生で、それぞれDID HIS OWN WAYで生きた二人だけに彼らの歌うMY WAYも素敵です。でも私は加山雄三さんのMY WAYが一番好きです。80歳で自作の船で7つの海を渡ろうという夢に向かって突き進む加山さん。人生の終わりが近づいた時、 “後悔もあったけど、とるに足りないものさ・・・自分を偽ったら何の意味もない・・・YES IT WAS MY WAY”と言えたら最高ですよね。
その言葉は、ゴルフにも当てはまると思います。
生きていく上で誰もが自分のやり方でつき進むということはなかなかできませんが、ゴルフならMY WAYはありですよね。社内のコンペで上司と同じ組で回ることになり、ゴルフ暦の長いその上司にパー5で刻むことを勧められても、大きなヘッドのクラブをバッグから抜く勇気・・・池越えのグリーンを狙って、池を縁取る板に当たって跳ね返ったボールが水に消えてダブルボギーをたたいたとしても、言われるがままに刻んでパーであがるよりも爽快な気分になるはずです。
たかがゴルフ、されどゴルフ。だからこそゴルフはMY WAYで、そう思いませんか?
先週は日本プロゴルフ協会の倉本昌弘会長が日本シニアオープンで優勝しました。そのビッグな大会で初出場ながら堂々51位につけたタケ小山プロもまたHIS OWN WAYを行く人です。
今週は、「WGC‐HSBCチャンピオンズ」が開催されます。
日本からは松山英樹選手、岩田寛選手、竹谷佳孝選手が出場。
誰が“自分のゴルフで”優勝するのか、楽しみです。
「WGC-HSBCチャンピオンズ」 放送日時
1日目:11月6日(木)午後7:00?10:00
2日目:11月7日(金)午後7:00?10:00
3日目:11月8日(土)午後7:00?10:00
最終日:11月9日(日)午後7:00?10:00
筆者:Makiko Minoya
1995年 州立セントラルフロリダ大学 ジャーナリズム科卒業
1996年 ゴルフチャンネル入社(米フロリダ州オーランド)
好きなゴルファー:タケ小山プロ
[写真:アフロ / ©Getty Images]