転機。これまでの10年を土台に、大人の藍へ
2015年7月17日(金)午前11:00
昨シーズンの賞金ランキングを77位で終えた宮里藍はシード復帰を果たし、新たにプレーヤーディレクター(選手理事)に就任し、米ツアー11年目となる2016シーズンを迎えている。宮里がいま想うこととは・・・
米ツアー世代交代の波
若手の台頭が著しいアメリカ女子ツアー。昨年は史上最年少で賞金女王、プレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたニュージーランドのリディア・コ(18歳)を筆頭に、初優勝を含む年間3勝を挙げた韓国のキム・セヨン(23歳)、米国期待の若手・賞金ランキング5位のレクシー・トンプソン(21歳)、全米女子オープンを制した韓国の新鋭、チョン・インジ(21歳)などヤングプレーヤーが目覚ましい活躍を見せた。
また、キャリアグランドスラムを達成した朴仁妃の5勝をはじめ、シーズン31大会で韓国勢が15勝するなどオリンピックイヤーを前に韓国女子ゴルフの層の厚さを示した1年でもあった。
今シーズンもヤングプレーヤーの勢いは止まることなく、開幕から5戦を終えて優勝者は全て23歳以下の選手だ。2015年米ツアールーキー、韓国のジャン・ハナ(23歳)は第2戦の「コーツゴルフ選手権 by R+L Carriers」で米ツアー初優勝を飾ると、2月の「HSBC女子チャンピオンズ」でも優勝し、賞金ランキングトップに立っている。
続く賞金ランキング2位も今年米ツアー初優勝を挙げた日本の野村敏京(23歳)、3位は今季1勝、米国のレクシー・トンプソン、4位には開幕戦を制した韓国のキム・ヒョージュ(20歳)がつけている。
昨年末の番組収録では現在の米ツアーについて、宮里はこのように語っていた。
「コースセッティングの変化やメジャーが我慢比べから20アンダーで勝つ時代にもなっていて、アメリカで勝つのが年々難しいと思うようになった。自分が進化していかないと勝てない。」
苦しい戦いの中で導き出された一つの答え
昨年、米ツアー10年目の節目を迎えた宮里藍は初めてシード権を失い“過去4年間の複数優勝者"の出場資格で参戦したが、23試合に出場してトップ10入りはなし。最終戦「CMEグループタイトルホルダーズ」でシーズン最高位となる14位に入り、辛うじてシード復帰を果たしたものの、苦しい戦いが続いた。
「シーズン序盤は流れが良かったけど、6月?9月は自分を見失っていた。これまで技術的な部分で改善することはやって来なかったのにその頃はショット、パット共に試行錯誤、毎週いろんなことを試した。」と振り返っていた宮里。
シーズン中盤には5戦連続で予選落ちを喫するなど復調の兆しが見えない中、決して下を向くことなく絶え間ぬ努力を続けたことで、一つの答えが導き出された。
「(ショットやパット、技術的なことではなく)重要なのはやっぱりメンタル。今までは自分を受け入れる作業はしていたけど、“受け入れるフリ"でしかなかった。自分自身と向き合っているつもりが、自分を追い込む方に意識が行ってしまい普段やらないような技術的なことをやってしまった。」
良い意味で“大人のゴルフ"を目指したい
アメリカで10年戦ってきた宮里は日本のみならず、今や米ツアーで中心的な存在にもなっている。昨年まではコースセットアップ委員を務め、今シーズンはプレーヤーディレクター(選手理事)に就任した。
18歳でツアー初優勝を飾り史上初の高校生プロゴルファーとなった宮里はその後も優勝を重ね、史上最年少での日本女子オープン制覇など数々のツアー記録を打ち立てた。
2006年、21歳で海を渡り米ツアーに参戦したが、3年間は優勝に手が届かず、2007年には5戦連続で予選落ち(うち一回は棄権)と成績不振に陥った。それでも世界最高峰のフィールドに挑み続け、2009年の「エビアン・マスターズ」で悲願のLPGAツアー初優勝を飾ると、翌2010年は日本人史上最多のシーズン5勝、世界ランキング1位になるなど輝かしい成績を残した。
「(米ツアーでの10年間は)あっという間で早かったけれど内容が濃かったので20年分の重みを感じる。米ツアーに挑戦して、いつのまにか世界No.1になっていて、実感もなかった。ただ、自信がついたことで地に足を付けてやっていこうと思ったし、世界No.1になってからの5年間の方が自分にとっては良い時間だったように思う。」
逆境をバネに苦難を乗り越え、成長し続ける宮里。経験という大きな武器を手に2016年の戦いに臨む。
「2012年以降、優勝から遠ざかっているけど、この数年は自分にとって必要な時間だったと今は思える。ポーラとか良い選手でも数年勝てないことだってあるし、それだけ米ツアーで勝つのは難しい。20代で“宮里藍としての土台"は固まった。これからの10年はメンタルだと思う。これまでの10年間を肥やしにして、自分の強みを伸ばし、良い意味で“大人のゴルフ"を目指したい。」
米ツアー10年目、人生初のシード落ちを経験した2015年は宮里にとって転機となる大きな1年となった。
優勝の鍵はショートゲーム
今週、現地時間3/17(木)にアリゾナで開催される「JTBCファウンダーズカップ」は、過去2012年、13年と2位に入るなど相性の良い大会で、2013年にはコースレコードの63をマークしているだけに上位進出への期待が高まる。
トレーニングもしてギアも変わり飛距離も伸びたという宮里。「飛距離が伸びたことでパーオン率も上がったけど、昨シーズン中盤もパッティングで苦しんだ。優勝するにはパーオン率が悪くてもバーディやパーを取ることができるゴルフが必要。優勝の鍵は“ショートゲーム"」と話す。
今年の2月に、自身初のゴルフフェアへ来場した際には「(新たに使用するボールについて)アプローチで自分の思ったイメージで打てるし、クラブフェースにボールが乗るフィーリングが良い。今まで一番良いボール。」と太鼓判。会場に訪れたファンに対しても、「とにかく今年は勝ちたい。目標は優勝。」と勝利への貪欲さを見せた宮里。
日本から世界へ、LPGAツアーを代表する選手となった宮里藍。アメリカ挑戦11年目の2016年、新たな扉を開く?
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初日 3月18日(金) 午前7:00?10:00
2日目 3月19日(土) 午前7:00?9:00 無料配信!
3日目 3月20日(日) 午前8:00?10:00※最大延長午前11:00まで
最終日 3月21日(月) 午前8:00?10:00※最大延長午前11:30まで
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3/19(土)午前3:00?午前9:00
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