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松山英樹「メジャー制覇」に向けて、奏でられ始めた協奏曲が、世界に響き渡る

2016年2月17日(水)午後5:00

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かつて“帝王"と呼ばれたジャック・ニクラスはこんな言葉を残している。

「栄光の影には、星の数ほどの悔しさがある」

メジャー18勝を挙げたレジェンドは、その影で多くの悔しい敗北を味わい、それをバネにいくつもの壁を乗り越えてきた。時は巡り2014年、そのニクラスの前で“日本のエース"松山英樹がPGAツアー初優勝を遂げた。

あれから616日。松山は帝王の残した言葉を誰よりも深く噛みしめることとなる。その間はまるで勝利の女神に見放されたかのように、悔しさを味わってきた。しかし、そのもどかしさの先には真の頂へとつながる道があったのだ。

2016年ウェイストマネジメント フェニックスオープンで待望のツアー2勝目を挙げ、「72ホール目のバーディパットは、今までで一番いいパットを打ったんじゃないか」と振り返った松山。最高の一打はどのようにして生まれたのか。その道のりをたどる。

忘れられない一打、届かない2勝目

2015年10月、松山のツアー3年目のシーズンが始まった。開幕戦で17位に入った松山は、続く2戦目、CIMBクラシックでいきなり優勝のチャンスをつかむ。ツアー屈指のショット力で次々にチャンスを生み出し、3日間を終えて首位と3打差の4位につけた。迎えた最終日、逆転優勝へ序盤から猛追。5番パー5のバーディでついに首位をとらえる。

しかし、優勝が目の前に迫った途端、松山のプレーが狂い始めた。パットが決まらず、安定したショットもキレを失い、後半奪ったバーディはわずかに2つ。勝負のかかる大事な場面で取りこぼし、5位に終わった。

「緊張しても崩れないものを作らないといけない」と口をついた反省の先には、昨季のある1打がある。

2015年2月のウェイストマネジメント フェニックスオープン。最終日最終組、トップと1打差の最終18番で迎えた、決めればプレーオフというバーディパット。松山は緊張感に打ち勝つことが出来なかったのだ。初優勝からおよそ2年。松山は7回のトップ5入りを果たしながら、優勝の一歩手前で何度もこういった悔しさを味わってきた。

「2勝目を挙げることに関しては、足りない部分はないと思う。ただ、その確率を上げるためにしっかり準備をしていかないといけない」

しかし、その思いとは裏腹に不調の波が松山を飲み込んでいく。

足りなかった“運"

2015年11月のWGC-HSBCチャンピオンズでは、ショットが大きく乱れた。第1、2ラウンドのパーオン率はわずか44%。50%を割ったのは33ラウンドぶりのことだ。4日間を通じ、何度も素振りを繰り返して復調への道を模索する姿が見られた。優勝争いを繰り広げた試合からわずか1週間で調子はどん底に。そして、一度崩れた調子の波はそう簡単には戻らなかった。

年明け初戦は予選落ち。2日目には「76」の大叩きを喫した。「良い方向につながらなくて、心が折れそう」と弱音をのぞかせた松山は「何か良いきっかけを見つけられるように考えたい」ともがいていた。

「いつもゴルフのために本当に頑張っている。でも優勝はそんな簡単なことじゃない。“運"も必要」と、日米問わず多くのトップゴルファーを支えてきた通訳ボブ・ターナー氏は、松山が感じていた歯がゆさを代弁する。

やがて、勝利を挙げるために必要とされるその“運"が、絶不調の松山に巡ってくる。舞台はウェイストマネジメント フェニックスオープン。過去2年は4位タイ、2位タイと本人も認めるほど相性の良い大会。しかし同時に、全てのきっかけとなったあの舞台でもあった。

再び因縁の舞台へ

2016年2月4日に開幕したフェニックスオープン。最も相性が良く、最も悔しさの残る大会のスタートは、不安と期待が入り混じったものだった。しかし、その不安はホールを回るごとに払拭されていく。この日はパットが冴えわたり、6アンダー65で首位発進を決める。

その後は粘り強いプレーを続けた松山。3日目終了時点で通算10アンダーの2位タイにつけ、トップのダニー・リーと3打差で最終日を迎えることに。しかし、進藤大典キャディは「ダニー選手の崩れる可能性を考えた中で、一番大きな壁はリッキー」と考えていた。

飯田光輝トレーナーいわく「本当に自然に」気負いなく最終日を迎えた松山は、スタートホールから4.5メートルのパットを沈めて好発進。飯田氏の言葉通り緊張感を感じさせず、淡々とホールをこなしていく。しかし10番、ファウラーが見事なチップインバーディで単独首位に浮上。松山とリーが1差で追う、進藤キャディの読み通りの展開となった。

迎えた13番は両者譲らずバーディと、勝負は松山とファウラーの一騎打ちの様相。すると15番パー5、強気のゴルフで2オンからバーディとしたファウラーに対し、松山は3.4メートルのチャンスを決め切れず。残り3ホールで2打のビハインドを背負ってしまう。

この時、解説を務めていた杉澤伸章氏はある場面を思い出していたという。それは昨年のザ・プレジデンツカップ。2日目にメンバーから外され、ロープの外から強豪たちのプレーを見ていた松山は「大切なものをつかんだ」と杉澤氏は言う。

「目を疑いたくなるプレーも見た。そういうミスも起きると分かった」と当時を振り返る松山。そこでつかんだのは“誰でもミスをする"という等身大の現実だった。ファウラー相手に敗戦濃厚となった松山だが、ミスの順番が相手に回ってくるのを信じて「最後の最後まで自分のゴルフに徹底した(杉澤氏)」のだ。

運命のバーディパットで“人生最高の一打"

すると、2打差のまま迎えた17番でファウラーがまさかの池ポチャ。ボギーを叩いたファウラーを尻目にきっちりバーディを獲り、松山はついにライバルと並んだ。そして最終ホール、松山は2打目を下りの5メートルにつける。

その先に待ち構えていたのは、勝利を逃した1年前と同じ場所、同じシチュエーションでの運命のバーディパット。外せばまた優勝が遠のく、そのプレッシャーに負けることなく、松山は5メートル強の距離から“人生最高の一打"を放ってプレーオフへと進んだ。

運命のプレーオフは両者譲らぬ激闘となり、決着のつかないまま3ホールを消化。そして4ホール目の17番、ファウラーが1打目をまたも池に入れて勝負あり。松山が2度目の栄冠をつかみ取った。

敗れたファウラーは会見の席で涙を浮かべたが、勝負の裏表はやはり紙一重だった。その厳しい世界で松山はまた次の一歩を踏み出す。生涯の夢、マスターズ制覇へ。松山英樹の栄光の旅が始まる。

【見逃し配信】「松山英樹の軌跡 ?夢への協奏曲(コンツェルト)?」

「松山英樹の軌跡 ?夢への協奏曲(コンツェルト)?」

今年2月、松山英樹は1年半ぶりの頂点に立った。日本人選手では、丸山茂樹に続く史上2人目となる複数回優勝を果たした松山。番組では、松山の活躍を振り返るとともに、見据える先にある「メジャー制覇」に向けて、奏でられ始めた協奏曲が、世界に響き渡る。

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