フィル・ミケルソンの祈りと予言(舩越園子の現地レポート/2016全米プロゴルフ選手権)
2016年7月31日(日)午前9:04
全米プロ3日目は雷雨に見舞われ、一時中断。結局、その日はプレーが再開できず、日曜日へ持ち越しとなった。しかし、日曜日も雷雨の予報。もしかしたら月曜フィニッシュになってしまうかもしれない。
そういえば、全米プロがバルタスロールで前回開催された2005年は大会史上19年ぶりの月曜フィニッシュだった。あのときのミケルソンはカチカチに干上がったグリーンに手を焼いており、「週末に雨さえ降ってくれれば」と秘かに祈った。すると彼の雨乞い効果が出過ぎたせいなのか、最終日は雨というよりプレーを中断させる豪雨になり、月曜フィニッシュへ。しかし、その雨のおかげでグリーンは緩み、ミケルソンは雨上がりの月曜日にメジャー2勝目を挙げた。
あれから11年が経過した今年。ミケルソンは2週前の全英オープンでヘンリック・ステンソンとの激しい一騎打ちを演じ、2位に甘んじたものの、自身のゴルフには「後悔は一つもない」と胸を張ったばかりだ。
すでに46歳だが、体力もゴルフも「10年前より強くなっている」「自信が膨らんでいる」と目を輝かせている。英国から米国へ戻ると、早々にニューヨーク郊外へ移動し、スポンサー契約先の企業のイベントやチャリティ活動等を精力的にこなした上でバルタスロールにやってきた。
「僕はチャレンジすることが好きなんだ。今でも僕は(僕よりずっと若い)ローリー・マキロイやジェイソン・デイを相手に戦うのがとても楽しみなんだ」
ミケルソンの期待は、どうしてだか膨らみすぎて「極端」になってしまう傾向が昔からある。メジャーに勝てそうで勝てないことが続いたときも、期待が大きすぎて空回りしたり、理想の攻めを敢行しすぎて自滅したりが多かった。
2週前の全英オープン初日にはメジャー大会における最少ストローク記録を更新する「62」にあと一歩まで迫り、彼自身、記録更新を心底望んでいたのだが、最終ホールのバーディーパットをカップに沈めることができず、「こんなチャンスは生涯でもう2度とないかもしれないのに、、、、」と悔しがった。
その全英オープンで素晴らしい優勝争いを披露して2位になり、この全米プロでも若きトッププレーヤーたちとの優勝争いを目指していたミケルソンがまたしても雨乞いをしたせいなのかどうか。今年のバルタスロールは開幕前から雨でフェアウエイもグリーンも柔らかくなり、2日目早朝の大雨でさらに柔らかくなった。
初日にやや苦しんで1オーバー発進となり、辛くも予選通過を果たしたミケルソンは、3日目は早朝からスタートし、18ホールを68で回り終えて、こんな予言をした。
「このコースはすっかり柔らかくなって、かなりのロースコアが出やすい状態になっている。この決勝ラウンド2日間のうちに誰かが63の記録を破ると思う。今日か明日、きっと61か62が出ると思う」
ミケルソンがそんな予言をしてから1時間も経たないうちに、バルタスロールは激しい雷雨に見舞われてプレー中断となり、結局、そのまま再開せずに明日へ持ち越しとなった。ミケルソンが言った「かなりのロースコアが出やすい状態」は、極端に激しい雨で極端にコースが柔らかくなる状態へと発展。柔らかいと言うより、グチャグチャにぬかるんでロースコアが逆に出にくい状態になってしまったのかもしれない。
けれど、それはそれとして、決してうれしくはない不規則進行に突入してしまったバルタスロールの明日の最終日、「61、62の新記録が出るかもしれない」と思えば、気持ちがちょっぴり明るくなる。これぞ、ミケルソン流のポジティブ・シンキング?
ともあれ、優勝争いに絡む上位選手の大半は一気に36ホールをプレーして勝利を目指す最終日。体力気力勝負になるからこそ、ポジティブな姿勢こそが、きっとカギになる。
文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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写真提供:Getty Images