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土砂降りの最終日でも盛り上がる!佐藤信人がみた文化として根付く「全英オープン」
2023年7月27日(木)午後0:23
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151回目を迎えた全英オープン。今年は、7月20~23日、イングランド・ウィラル半島ホイレイクのロイヤルリバプールゴルフクラブで開催され、アメリカ・ジョージア州出身のレフティー、ブライアン・ハーマン(米)がメジャー初優勝を飾りました。リポーターとして現地に乗り込み、各選手のプレーを間近で見るだけではなく、全英オープンの興奮をオンコースで味わったプロゴルファー・佐藤信人さんに、自身が感じた全英オープンを語ってもらいました。
今年の全英オープンは、ブライアン・ハーマンの圧勝で幕を閉じました。何よりも驚いたのは、ハーマンが小柄なことです。身長は170cmともう日本人の中でも低いほうかもしれません。しかも、ハーマンの周りに大柄な人がたくさんいたので余計に小さく見えました。
例えば、彼のキャディーをボブ・ツエー(米)の弟が務めていたんですが、そのキャディーは190cm以上あったし、表彰式で一緒に並んでいたローアマの選手(クリスト・ランプレット・南ア)も2mありましたからね。また、ハーマンが表彰式で“チャンピオン・ゴルファー・オブ・ザ・イヤー”として迎え入れられるとき、R&Aのスタッフたちによって作られた人垣の中を通って入ってきたんですが、そのシーンは“大人に迎えられる小学生”のようでした。
それを見てつくづく思ったのが、「全英というのは、パワーゲームじゃない」ということです。特に今回のロイヤルリバプールは、点から点に打つ正確なショットが求められるコース。それがハーマンの勝因のひとつになったと思います。
それと、精神力の強さもハーマンの勝因として挙げたいと思います。ロイヤルリバプールを埋め尽くした英国のファンからすると、アメリカの選手が独走しているのが気に入らないらしく、お酒が入っていることもあって、相当過激なヤジを飛ばしていたのですが、ハーマンは全く動ぜず、それどころかその声を聞いて逆に闘争心を燃やしていたような気がします。
これは私の勝手な想像ですが、おそらく昔から、「大きな選手には負けない」という気持ちでやってきたのでしょう。2~3m先の地面を見つめながら、静かに歩を進める姿に感動すら覚えました。本当にいいチャンピオンが生まれました。
そんなハーマンとは対照的に、ロリー・マキロイ(北アイルランド)やトミー・フリートウッド(イングランド)への声援は、想像を絶するものでした。特に、地元出身のフリートウッドへの声援は激しく、あれだけ応援されたら選手冥利に尽きるだろうなと。
ただその一方で、「ファンの期待に応えなければ」という大きなプレッシャーもかかる。そのあたりが人気選手の難しさでしょうね。しかもその声援が、「頼むから頑張ってくれ」というように、祈り込めた感じだったので、選手としては平常心でプレーするのは難しいだろうなと思って見ていました。
今回の全英オープンは、いかにゴルフ文化が彼の地に根付いているかということを改めて知ることになりました。ご存じのように最終日は土砂降りで、私自身、あんなにずぶ濡れになったことはないというほどの大雨だったのですが、ほとんどのギャラリーが家路に急ぐことはなく、しかも文句ひとついわないで戦況を見つめていました。また、人が多くてなかなか進めなかったり、フェアウェイを横切れずに延々と待たされるということもたびたびあったのですが、それに対して不平を漏らすことなく、みな年に一度のジ・オープンを存分に楽しんでいました。私も今回は、大いに楽しむと同時に、大いに勉強をさせてもらいました。勉強という点でいえば、欧米のリポーターたちの動きやリポートの仕方は大変参考になりましたね。なるほどああいうふうに動くのかと(笑)。
また、松山英樹選手ら日本人選手には1週間完全密着したことで、今まで気づかなかった彼らの変化にも気づかされました。例えば松山選手の場合、練習ラウンドではあまり調子が良くなかったのですが、試合では自分のパフォーマンスを存分に発揮。その変化には驚かされました。
現地では、完全にミーハーになった自分もいました。ミーハーといっても選手にドキドキしたわけではありません。私のテンションが上がったのは、PGAツアーの現地解説者や選手の家族が目の前を通ったとき。ジョン・ラームやマキロイのお父さんが目の前を通ったときにはテンションもマックスで、心の中ではしゃいだものです(笑)。本当に楽しい1週間でした。
(写真:Getty Images)
ショットの正確さ精神力の強さが光ったハーマン
今年の全英オープンは、ブライアン・ハーマンの圧勝で幕を閉じました。何よりも驚いたのは、ハーマンが小柄なことです。身長は170cmともう日本人の中でも低いほうかもしれません。しかも、ハーマンの周りに大柄な人がたくさんいたので余計に小さく見えました。
例えば、彼のキャディーをボブ・ツエー(米)の弟が務めていたんですが、そのキャディーは190cm以上あったし、表彰式で一緒に並んでいたローアマの選手(クリスト・ランプレット・南ア)も2mありましたからね。また、ハーマンが表彰式で“チャンピオン・ゴルファー・オブ・ザ・イヤー”として迎え入れられるとき、R&Aのスタッフたちによって作られた人垣の中を通って入ってきたんですが、そのシーンは“大人に迎えられる小学生”のようでした。
それを見てつくづく思ったのが、「全英というのは、パワーゲームじゃない」ということです。特に今回のロイヤルリバプールは、点から点に打つ正確なショットが求められるコース。それがハーマンの勝因のひとつになったと思います。
それと、精神力の強さもハーマンの勝因として挙げたいと思います。ロイヤルリバプールを埋め尽くした英国のファンからすると、アメリカの選手が独走しているのが気に入らないらしく、お酒が入っていることもあって、相当過激なヤジを飛ばしていたのですが、ハーマンは全く動ぜず、それどころかその声を聞いて逆に闘争心を燃やしていたような気がします。
これは私の勝手な想像ですが、おそらく昔から、「大きな選手には負けない」という気持ちでやってきたのでしょう。2~3m先の地面を見つめながら、静かに歩を進める姿に感動すら覚えました。本当にいいチャンピオンが生まれました。
そんなハーマンとは対照的に、ロリー・マキロイ(北アイルランド)やトミー・フリートウッド(イングランド)への声援は、想像を絶するものでした。特に、地元出身のフリートウッドへの声援は激しく、あれだけ応援されたら選手冥利に尽きるだろうなと。
ただその一方で、「ファンの期待に応えなければ」という大きなプレッシャーもかかる。そのあたりが人気選手の難しさでしょうね。しかもその声援が、「頼むから頑張ってくれ」というように、祈り込めた感じだったので、選手としては平常心でプレーするのは難しいだろうなと思って見ていました。
今回の全英オープンは、いかにゴルフ文化が彼の地に根付いているかということを改めて知ることになりました。ご存じのように最終日は土砂降りで、私自身、あんなにずぶ濡れになったことはないというほどの大雨だったのですが、ほとんどのギャラリーが家路に急ぐことはなく、しかも文句ひとついわないで戦況を見つめていました。また、人が多くてなかなか進めなかったり、フェアウェイを横切れずに延々と待たされるということもたびたびあったのですが、それに対して不平を漏らすことなく、みな年に一度のジ・オープンを存分に楽しんでいました。私も今回は、大いに楽しむと同時に、大いに勉強をさせてもらいました。勉強という点でいえば、欧米のリポーターたちの動きやリポートの仕方は大変参考になりましたね。なるほどああいうふうに動くのかと(笑)。
また、松山英樹選手ら日本人選手には1週間完全密着したことで、今まで気づかなかった彼らの変化にも気づかされました。例えば松山選手の場合、練習ラウンドではあまり調子が良くなかったのですが、試合では自分のパフォーマンスを存分に発揮。その変化には驚かされました。
現地では、完全にミーハーになった自分もいました。ミーハーといっても選手にドキドキしたわけではありません。私のテンションが上がったのは、PGAツアーの現地解説者や選手の家族が目の前を通ったとき。ジョン・ラームやマキロイのお父さんが目の前を通ったときにはテンションもマックスで、心の中ではしゃいだものです(笑)。本当に楽しい1週間でした。
(写真:Getty Images)
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