海外男子
選手もコースも最高だった2年に一度のゴルフの祭典「ライダーカップ」
2023年10月5日(木)午後3:10
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米国選抜と欧州選抜が国の威信と名誉を懸けて激突する2年に1度のビッグイベント「ライダーカップ」。2023年は、10月6日~7日、ローマのマルコ・シモーネゴルフ&カントリークラブ(イタリア)で開催され、欧州選抜が米国選抜に5ポイント差(欧州16.5対米国11.5)をつけてライダーカップ奪還を果たしました。世界中が湧いた激戦の模様を、ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロに振り返ってもらいました。
2日目が終わって、欧州9.5ポイント、米国2.5ポイントと欧州が米国を圧倒。最終日も早い段階で決着が付くことが予想されたのですが、米国が意地をみせ、中盤以降は、「ひょっとしたら」と思わせるような展開になりました。しかも最終日は、ワンサイドになったのが2組目のビクター・ホブランド(ノルウェー)×コリン・モリカワ(米国)(4&3でホブランドが勝利)ぐらいで、あとはすべて接戦。結果的には5ポイント差がつきましたが、ライダーカップならではの非常に面白い大会になりました。
最終日の1組目は、ジョン・ラーム(スペイン)とスコッティ・シェフラー(米国)。シェフラーはワールドランキング1位で、アメリカのエース。今回は、引き分けが1つありましたが、序盤はエースの働きができず、土曜日には9&7という記録的な大敗を喫し、涙を流しているシーンも映し出されていました。しかし翌日の日曜日、「米国のエースはこの人しかいない」ということで1組目に入りました。その期待に応えるような活躍で、最終的には引き分けになりましたが、シェフラーの頑張りには個人的に感動しました。
最終日4組目が終わった時点で、欧州が2勝1敗1分け。5組目のマット・フィッツパトリック(イングランド)とマックス・ホーマ(米国)でフィッツが引き分けに持ち込めば欧州の勝利が確定したのですが、ここでホーマが踏ん張りました。圧巻だったのが18番のパー4。ホーマがセカンドショットをバンカーの縁の深いラフに入れてしまい、どうするのかと見ていたら、なんとアンプレアブルを宣言。1打ペナルティーを払って、寄せワンでパーを奪いました。対するフィッツパトリックは入ってもおかしくなバーディーパットを外してパー。1upリードしていたホーマがリードをキープして勝利を手にしました。
ホーマにしてみれば、あの難しいライから打つのとアンプレアブルを宣言するのとではどちらがパーの確率が高くなるかという判断だったと思うのですが、あの決断力、さらに2mちょっとのパーパットをねじ込む冷静さ。最高にカッコ良かったと思います。
もうひとつ個人的に印象的な試合を選ぶとしたら、3組目のジャスティン・ローズ(欧州)とパトリック・キャントレー(米国)との戦いです。今週のローズの活躍は秀逸でした。最年長として参戦し、この大会まで調子の悪かった新星のロバート・マッキンタイアを復調させるという大仕事をやってのけた。最終日のキャントレーとの試合は落としましたが、チームへの貢献度という点では素晴らしいものがあったと思います。
一方、キャントレーは、「キャップを被らない問題(※)」で物議を醸し、アウェーということもあって大ブーイングを浴びたわけですが、その中でよくあれだけ冷静にプレーできたなと。そのメンタルの強さには改めて感心させられました。この2人の戦い、結果的には2&1でキャントレーに軍配が上がりましたが、非常に見応えがありました。
私がMVPを選ぶとしたら、やはりホブランドでしょうか。年間王者の看板を引っ提げて登場し、欧州の2トップであるロリー・マキロイ、ラームと同じくらいの活躍を期待されていたわけですが、その期待を裏切ることのないプレーを見せてくれました。特に驚かされたのが、初日の1番でのチップイン。それまで緊張感に包まれていた会場の空気が一変するほどのビッグプレーでした。このプレーがその後の欧州チームの快進撃にも繋がったと思います。
今回のライダーカップに関しては、開催コースも面白かったと思います。2015年に開催が決定してから、マッチプレー向きに大改造。イーグルが出る可能性があるホールが、パー4で3つ、パー5で3つの計6ホール。しかもその半分以上が後半にあって、選手はもちろん見ている我々も「最後までわからない」と思うワクワクするセッティングでした。また、ラフは厳しく、入ってしまうとボギーかダボを覚悟しなければいけなかったのですが、フェアウェイは狭すぎず、広すぎず。そういう意味では選手たちも納得のいくコースだったのではないでしょうか。
2年に1度の祭典は終わってしまいましたが、ライダーカップに出場していた選手たち、リッキー・ファウラーやコリン・モリカワらが「ZOZO Championship」参戦のために日本にやって来ます。彼らがどんなプレーを見せてくれるのか。また、世界のトップに対して日本選手がどんな戦いを挑むのか。特にZOZOでは、海外志向の高い若手の活躍に期待したいと思います。
※編集部注:キャントレーがプレー中キャップを被っていなかったことについて、SNSで「キャントレーはライダーカップでは選手に賞金がないことに対して抗議している」という趣旨の書き込みが拡散された。本人は記者会見で否定し、最終日の米国選抜では、キャントレーを擁護する意図と思われるキャップをかぶらずにプレーする選手が数名いた。
(写真:Getty Images)
欧州選抜が5ポイント差勝利も最終日意地を見せた米国選抜
2日目が終わって、欧州9.5ポイント、米国2.5ポイントと欧州が米国を圧倒。最終日も早い段階で決着が付くことが予想されたのですが、米国が意地をみせ、中盤以降は、「ひょっとしたら」と思わせるような展開になりました。しかも最終日は、ワンサイドになったのが2組目のビクター・ホブランド(ノルウェー)×コリン・モリカワ(米国)(4&3でホブランドが勝利)ぐらいで、あとはすべて接戦。結果的には5ポイント差がつきましたが、ライダーカップならではの非常に面白い大会になりました。
最終日の1組目は、ジョン・ラーム(スペイン)とスコッティ・シェフラー(米国)。シェフラーはワールドランキング1位で、アメリカのエース。今回は、引き分けが1つありましたが、序盤はエースの働きができず、土曜日には9&7という記録的な大敗を喫し、涙を流しているシーンも映し出されていました。しかし翌日の日曜日、「米国のエースはこの人しかいない」ということで1組目に入りました。その期待に応えるような活躍で、最終的には引き分けになりましたが、シェフラーの頑張りには個人的に感動しました。
最終日4組目が終わった時点で、欧州が2勝1敗1分け。5組目のマット・フィッツパトリック(イングランド)とマックス・ホーマ(米国)でフィッツが引き分けに持ち込めば欧州の勝利が確定したのですが、ここでホーマが踏ん張りました。圧巻だったのが18番のパー4。ホーマがセカンドショットをバンカーの縁の深いラフに入れてしまい、どうするのかと見ていたら、なんとアンプレアブルを宣言。1打ペナルティーを払って、寄せワンでパーを奪いました。対するフィッツパトリックは入ってもおかしくなバーディーパットを外してパー。1upリードしていたホーマがリードをキープして勝利を手にしました。
ホーマにしてみれば、あの難しいライから打つのとアンプレアブルを宣言するのとではどちらがパーの確率が高くなるかという判断だったと思うのですが、あの決断力、さらに2mちょっとのパーパットをねじ込む冷静さ。最高にカッコ良かったと思います。
もうひとつ個人的に印象的な試合を選ぶとしたら、3組目のジャスティン・ローズ(欧州)とパトリック・キャントレー(米国)との戦いです。今週のローズの活躍は秀逸でした。最年長として参戦し、この大会まで調子の悪かった新星のロバート・マッキンタイアを復調させるという大仕事をやってのけた。最終日のキャントレーとの試合は落としましたが、チームへの貢献度という点では素晴らしいものがあったと思います。
一方、キャントレーは、「キャップを被らない問題(※)」で物議を醸し、アウェーということもあって大ブーイングを浴びたわけですが、その中でよくあれだけ冷静にプレーできたなと。そのメンタルの強さには改めて感心させられました。この2人の戦い、結果的には2&1でキャントレーに軍配が上がりましたが、非常に見応えがありました。
私がMVPを選ぶとしたら、やはりホブランドでしょうか。年間王者の看板を引っ提げて登場し、欧州の2トップであるロリー・マキロイ、ラームと同じくらいの活躍を期待されていたわけですが、その期待を裏切ることのないプレーを見せてくれました。特に驚かされたのが、初日の1番でのチップイン。それまで緊張感に包まれていた会場の空気が一変するほどのビッグプレーでした。このプレーがその後の欧州チームの快進撃にも繋がったと思います。
今回のライダーカップに関しては、開催コースも面白かったと思います。2015年に開催が決定してから、マッチプレー向きに大改造。イーグルが出る可能性があるホールが、パー4で3つ、パー5で3つの計6ホール。しかもその半分以上が後半にあって、選手はもちろん見ている我々も「最後までわからない」と思うワクワクするセッティングでした。また、ラフは厳しく、入ってしまうとボギーかダボを覚悟しなければいけなかったのですが、フェアウェイは狭すぎず、広すぎず。そういう意味では選手たちも納得のいくコースだったのではないでしょうか。
2年に1度の祭典は終わってしまいましたが、ライダーカップに出場していた選手たち、リッキー・ファウラーやコリン・モリカワらが「ZOZO Championship」参戦のために日本にやって来ます。彼らがどんなプレーを見せてくれるのか。また、世界のトップに対して日本選手がどんな戦いを挑むのか。特にZOZOでは、海外志向の高い若手の活躍に期待したいと思います。
※編集部注:キャントレーがプレー中キャップを被っていなかったことについて、SNSで「キャントレーはライダーカップでは選手に賞金がないことに対して抗議している」という趣旨の書き込みが拡散された。本人は記者会見で否定し、最終日の米国選抜では、キャントレーを擁護する意図と思われるキャップをかぶらずにプレーする選手が数名いた。
(写真:Getty Images)
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