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メジャー初制覇のシャウフェレはじめロースコア続出も「フェアなメジャーだった」全米プロゴルフ選手権【佐藤信人のアフタートーク】
2024年5月23日(木)午前11:23
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ケンタッキー州のバルハラゴルフクラブで開催された「全米プロゴルフ選手権」。雨の影響でコースコンディションがソフトだったこともありロースコアの戦いとなりましたが、ザンダー・シャウフェレ(米)が悲願のメジャー初優勝を飾りました。さらに大会2日日には「シェフラー逮捕」というショッキングなニュースも飛び込んできた今年の全米プロ。世界が注目した4日間を、ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロに振り返ってもらいました。
ターニングポイントになったのは11番のパー3だったと思います。10番のパー5でボギーを叩いて迎えた11番。確か7番アイアンだったと思いますが、ショートサイドにビシッと付けてバーディーを奪った。怒りの一振りだったのか、それとも、本人的にもう一度気合いを入れ直して打った1打だったのかは分かりませんが、10番のボギーでスイッチが入ったようにも見えました。それと、18番パー5の優勝を決めるバーディーパットも劇的でした。
バルハラGCは各ホールに名前が付けられていて、18番は、競馬で有名なケンタッキー州の「ケンタッキーダービー」にちなんで“写真判定”と呼ばれているのですが、ウィニングパットは縁をなめるようにカップイン。同コースで全米プロが開催されるのは今回で4回目ですが、劇的なフィニッシュになりました。
そのシャウフェレと激戦を繰り広げたプレーヤーも豪華な顔ぶれが揃っていました。まずは2位になったブライソン・デシャンボー(米)。シャウフェレは、「デシャンボーとのプレーオフだけは避けたかった」と言っていましたが、その言葉通り、最後までシャウフェレを苦しめました。今年はマスターズでも優勝争に加わるなど好調をキープしていたデシャンボー。今回は、距離が長いというだけでなく、雨の影響で地面が柔らかくなったので、飛ばし屋のデシャンボーを優勝候補に挙げる記者も多かったようですが、優勝には手が届かなかったものの、大会を大いにギャラリーを沸かせてくれました。
また、3位になったビクター・ホブランド(ノルウェー)も大会を盛り上げた一人といえるでしょう。昨季の年間王者で、昨年の全米プロは2位という実力者のホブランドですが、この大会前までの調子自体は決して良くありませんでした。コーチを変えるなどして、大会前にきっかけをつかんだようですが、本人的にはもう少し時間がかかると思っていたとか。そんな状態でも、このような大きな大会でいきなり上位に入ってくるあたりはさすがとしかいいようがありません。
もう一人、忘れてはならないのが8位タイに終わったスコッティ・シェフラー(米)。2日目朝に「シェフラー、逮捕」のニュースが飛び込んできたときは、誰もが驚いたと思いますが、すぐに釈放され、何とか大会には間に合いました。とはいえ、普通の精神状態ではなかったはず。そんな中でもきっちりトップ10に名を連ねてきました。
シェフラーにとっては、非常に残念な大会になったわけですが、その一方で、シェフラー人気が上がったのは事実。これまでワールドランキングナンバーワンということである程度のファンはいたものの、ローリー・マキロイほどの人気はなかったのですが、アクシデントに見舞われながらも淡々とプレーをするシェフラーの姿がギャラリーの心をつかんだようで、一気にファンが増えたようです。
日本人選手は松山英樹選手と久常涼選手の2人が決勝ラウンドに進出し、最終日は何と、同じ組で回りました。結果は、松山選手が8アンダー35位タイ、久常選手が11アンダー18位タイ。久常選手の健闘が光りました。
久常選手は今季予選落ちが5回ありましたが、マスターズ以外はすべて1打差での予選落ち。本当にいいプレーを続けていて、今回はしっかり予選を通過して上位にも入ったってことでかなり自信になったと思います。そういう点からいうと、今後、優勝争いに加わることもチャンスも出てくるだろうし、上手くいけば初優勝もあり得るかと。ぜひ今後に期待したいと思います。
最後に、全米プロ全体の総括を。今回は、メジャーでは珍しく、バーディー合戦となりました。メジャーというと、難しいコースでのしのぎ合いというイメージが強く、そのほうがメジャーらしくていいという人も多いようですが、個人的には今回のようなメジャーがあってもいいと思っています。
もともとPGA(全米プロゴルフ協会)のセッティングというのは、無理にスコア作りに行くのではなく、自然を生かしたフェアなコースを仕上げておいて、あとは天気に委ねるというもの。その考え通り、今年もフェアなメジャーになったことで、私自身も十分楽しめたし、良い大会になったと思います。
(写真:Getty Images)
11番バウンスバックで優勝をたぐり寄せたシャウフェレ
ザンダー・シャウフェレが、ついにメジャーを制しました。どちらかというと最終日に弱いというイメージがあって、「性格が優しすぎる」「勝負弱い」なんてこともいわれていましたが、すべての雑音を振り払うような優勝。実に見事でした。ターニングポイントになったのは11番のパー3だったと思います。10番のパー5でボギーを叩いて迎えた11番。確か7番アイアンだったと思いますが、ショートサイドにビシッと付けてバーディーを奪った。怒りの一振りだったのか、それとも、本人的にもう一度気合いを入れ直して打った1打だったのかは分かりませんが、10番のボギーでスイッチが入ったようにも見えました。それと、18番パー5の優勝を決めるバーディーパットも劇的でした。
バルハラGCは各ホールに名前が付けられていて、18番は、競馬で有名なケンタッキー州の「ケンタッキーダービー」にちなんで“写真判定”と呼ばれているのですが、ウィニングパットは縁をなめるようにカップイン。同コースで全米プロが開催されるのは今回で4回目ですが、劇的なフィニッシュになりました。
そのシャウフェレと激戦を繰り広げたプレーヤーも豪華な顔ぶれが揃っていました。まずは2位になったブライソン・デシャンボー(米)。シャウフェレは、「デシャンボーとのプレーオフだけは避けたかった」と言っていましたが、その言葉通り、最後までシャウフェレを苦しめました。今年はマスターズでも優勝争に加わるなど好調をキープしていたデシャンボー。今回は、距離が長いというだけでなく、雨の影響で地面が柔らかくなったので、飛ばし屋のデシャンボーを優勝候補に挙げる記者も多かったようですが、優勝には手が届かなかったものの、大会を大いにギャラリーを沸かせてくれました。
また、3位になったビクター・ホブランド(ノルウェー)も大会を盛り上げた一人といえるでしょう。昨季の年間王者で、昨年の全米プロは2位という実力者のホブランドですが、この大会前までの調子自体は決して良くありませんでした。コーチを変えるなどして、大会前にきっかけをつかんだようですが、本人的にはもう少し時間がかかると思っていたとか。そんな状態でも、このような大きな大会でいきなり上位に入ってくるあたりはさすがとしかいいようがありません。
もう一人、忘れてはならないのが8位タイに終わったスコッティ・シェフラー(米)。2日目朝に「シェフラー、逮捕」のニュースが飛び込んできたときは、誰もが驚いたと思いますが、すぐに釈放され、何とか大会には間に合いました。とはいえ、普通の精神状態ではなかったはず。そんな中でもきっちりトップ10に名を連ねてきました。
シェフラーにとっては、非常に残念な大会になったわけですが、その一方で、シェフラー人気が上がったのは事実。これまでワールドランキングナンバーワンということである程度のファンはいたものの、ローリー・マキロイほどの人気はなかったのですが、アクシデントに見舞われながらも淡々とプレーをするシェフラーの姿がギャラリーの心をつかんだようで、一気にファンが増えたようです。
日本人選手は松山英樹選手と久常涼選手の2人が決勝ラウンドに進出し、最終日は何と、同じ組で回りました。結果は、松山選手が8アンダー35位タイ、久常選手が11アンダー18位タイ。久常選手の健闘が光りました。
久常選手は今季予選落ちが5回ありましたが、マスターズ以外はすべて1打差での予選落ち。本当にいいプレーを続けていて、今回はしっかり予選を通過して上位にも入ったってことでかなり自信になったと思います。そういう点からいうと、今後、優勝争いに加わることもチャンスも出てくるだろうし、上手くいけば初優勝もあり得るかと。ぜひ今後に期待したいと思います。
最後に、全米プロ全体の総括を。今回は、メジャーでは珍しく、バーディー合戦となりました。メジャーというと、難しいコースでのしのぎ合いというイメージが強く、そのほうがメジャーらしくていいという人も多いようですが、個人的には今回のようなメジャーがあってもいいと思っています。
もともとPGA(全米プロゴルフ協会)のセッティングというのは、無理にスコア作りに行くのではなく、自然を生かしたフェアなコースを仕上げておいて、あとは天気に委ねるというもの。その考え通り、今年もフェアなメジャーになったことで、私自身も十分楽しめたし、良い大会になったと思います。
(写真:Getty Images)
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