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決して簡単ではなかったスコッティ・シェフラーの今季5勝目、立ちはだかったミュアフィールドビレッジとコリン・モリカワ
2024年6月13日(木)午後0:17
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PGAツアーシグネチャーイベントのひとつ、「ザ・メモリアルトーナメント presented by ワークデイ」が、今年もジャック・ニクラス設計のミュアフィールドビレッジゴルフクラブ(オハイオ州)で開催されました。ニクラスの最高傑作を舞台にした今回も、ロースコアによる激戦が繰り広げられましたが、世界ナンバーワンのスコッティ・シェフラーが強さを発揮。コリン・モリカワを1打差で退けて頂点に立ちました。
CSゴルフネットワークで同大会の解説を務めた、デビッド・レッドベターに師事するなど海外ゴルフに精通するゴルフスイングアナリストの吉田洋一郎さんに振り返ってもらいました。
今年も、多くの選手がミュアフィールドに苦しめられました。特に、3日目、4日目のピンポジションが非常に難しく、1ヤード四方のところにボールを落とさなければピンに寄らないというようなセッティング。選手は4日間の戦いで、相当疲弊したと思います。
そんな中で強さを発揮したのは、今季4勝を挙げていたスコッティ・シェフラーでした。この大会、特に素晴らしかったのは、100ヤード以内の精度で、ここしかないというところにピタッと落としていたのが印象的でした。
ただ、そんなシェフラーでも簡単に優勝をさせてくれないのがミュアフィールドの難しいところ。最終日もスタート時点では2位に4打差をつけていたわけですが、コリン・モリカワの猛追もあり、いつものシェフラーのように横綱相撲とはいきませんでした。
シェフラーとモリカワの戦いで勝負を分けたのは、最終日の16番パー3でした。フォローの風が吹いていて、ピンポジションは左。ピンに寄せる選手はほとんどおらず、ピンを狙って奥のバンカーに入れてしまう選手が続出し、その奥のバンカーからのサンドセーブ率も何と2割前後というこの16番。
そんな中で、シェフラー、モリカワともに右の手前からアプローチを打つことになり、シェフラーはパター、モリカワはウェッジで狙ったんですが、最終的にシェフラーはパーパットをねじ込んだのに対し、モリカワが痛恨のボギー。この我慢のしどころで勝負の決着が付きました。ニクラウスは、このコースの攻略法を、「ペイシェント(我慢、忍耐)」といいますが、その言葉通り、シェフラーが我慢比べに勝った瞬間でした。
とはいえ、モリカワのプレーも決して悪くはありませんでした。スタート時点から眼光鋭く、プレーの面でも1、2番からドライバーを振り回し、シェフラーに追いつこう、プレッシャーを与えようというアグレッシブなゴルフを展開していました。その気持ちがバーディーに繋がって、最後までシェフラーを追い詰めました。
最後は少し疲れが出たのか力尽きてしまったのですが、彼の持ち味であるショットの正確性だけでなく、類い希な集中力を発揮して1打1打を丁寧に、クレバーな攻めをするという彼の強みが存分に発揮された試合でした。今回2位に終わりましたが、この戦いで得たものは大きく、全米オープンもいいプレーをしてくれると思います。
一方、シェフラーは、これで今季5勝。お子さんが生まれてからは初めての優勝なので、その味は格別かと思われます。奥さん、そして、まだ首も座っていないお子さんと3人で優勝の喜びを分かち合ったシーンは、見ている我々もグッときましたし、シェフラー家の宝になると思います。
1アンダー8位タイで終えた松山英樹選手の健闘も光りました。序盤はショットが安定せず少し苦しみましたが、徐々にショットが良くなり、それに比例してパットも良くなってきました。特に最終ラウンドのパッティングは、ほぼ完璧だったと思います。全米オープの前にこの厳しいセッティングの中で充実したプレーができたということは、彼にとっても大きな自信になるはずです。
さて、その全米オープンですが、今年も厳しい戦いになるでしょう。その硬さから、“亀の甲羅”とも称されるパインハーストリゾート&カントリークラブ No.2のグリーンをどう攻略するか。セッティングも全米オープンらしく、フェアウェイが狭く、ラフも厳しくなってくるでしょう。そこで生き残るためには、高い精度のショットが要求される。となると、当然、ショットメーカーが上位を占めることになるので、今回優勝したシェフラーやモリカワ、また、ショットが良くなってきている松山選手辺りが上位に来ると思うのですが。
また、松山選手以外に、石川遼選手、河本力選手、清水大成選手、金谷拓実選手、星野陸也選手ら数多くの日本人選手が出場します。期待しているのは、オリンピック出場を目指している星野陸也選手。肺の病気(気胸)で休養していたので全米オープンが復帰戦になるわけですが、星野選手らしいいいプレーを期待したいと思います。
(写真:Getty Images)
CSゴルフネットワークで同大会の解説を務めた、デビッド・レッドベターに師事するなど海外ゴルフに精通するゴルフスイングアナリストの吉田洋一郎さんに振り返ってもらいました。
シェフラーvsモリカワ、勝負の分かれ目は最終日16番パー3
今年も、多くの選手がミュアフィールドに苦しめられました。特に、3日目、4日目のピンポジションが非常に難しく、1ヤード四方のところにボールを落とさなければピンに寄らないというようなセッティング。選手は4日間の戦いで、相当疲弊したと思います。
そんな中で強さを発揮したのは、今季4勝を挙げていたスコッティ・シェフラーでした。この大会、特に素晴らしかったのは、100ヤード以内の精度で、ここしかないというところにピタッと落としていたのが印象的でした。
ただ、そんなシェフラーでも簡単に優勝をさせてくれないのがミュアフィールドの難しいところ。最終日もスタート時点では2位に4打差をつけていたわけですが、コリン・モリカワの猛追もあり、いつものシェフラーのように横綱相撲とはいきませんでした。
シェフラーとモリカワの戦いで勝負を分けたのは、最終日の16番パー3でした。フォローの風が吹いていて、ピンポジションは左。ピンに寄せる選手はほとんどおらず、ピンを狙って奥のバンカーに入れてしまう選手が続出し、その奥のバンカーからのサンドセーブ率も何と2割前後というこの16番。
そんな中で、シェフラー、モリカワともに右の手前からアプローチを打つことになり、シェフラーはパター、モリカワはウェッジで狙ったんですが、最終的にシェフラーはパーパットをねじ込んだのに対し、モリカワが痛恨のボギー。この我慢のしどころで勝負の決着が付きました。ニクラウスは、このコースの攻略法を、「ペイシェント(我慢、忍耐)」といいますが、その言葉通り、シェフラーが我慢比べに勝った瞬間でした。
とはいえ、モリカワのプレーも決して悪くはありませんでした。スタート時点から眼光鋭く、プレーの面でも1、2番からドライバーを振り回し、シェフラーに追いつこう、プレッシャーを与えようというアグレッシブなゴルフを展開していました。その気持ちがバーディーに繋がって、最後までシェフラーを追い詰めました。
最後は少し疲れが出たのか力尽きてしまったのですが、彼の持ち味であるショットの正確性だけでなく、類い希な集中力を発揮して1打1打を丁寧に、クレバーな攻めをするという彼の強みが存分に発揮された試合でした。今回2位に終わりましたが、この戦いで得たものは大きく、全米オープンもいいプレーをしてくれると思います。
一方、シェフラーは、これで今季5勝。お子さんが生まれてからは初めての優勝なので、その味は格別かと思われます。奥さん、そして、まだ首も座っていないお子さんと3人で優勝の喜びを分かち合ったシーンは、見ている我々もグッときましたし、シェフラー家の宝になると思います。
1アンダー8位タイで終えた松山英樹選手の健闘も光りました。序盤はショットが安定せず少し苦しみましたが、徐々にショットが良くなり、それに比例してパットも良くなってきました。特に最終ラウンドのパッティングは、ほぼ完璧だったと思います。全米オープの前にこの厳しいセッティングの中で充実したプレーができたということは、彼にとっても大きな自信になるはずです。
さて、その全米オープンですが、今年も厳しい戦いになるでしょう。その硬さから、“亀の甲羅”とも称されるパインハーストリゾート&カントリークラブ No.2のグリーンをどう攻略するか。セッティングも全米オープンらしく、フェアウェイが狭く、ラフも厳しくなってくるでしょう。そこで生き残るためには、高い精度のショットが要求される。となると、当然、ショットメーカーが上位を占めることになるので、今回優勝したシェフラーやモリカワ、また、ショットが良くなってきている松山選手辺りが上位に来ると思うのですが。
また、松山選手以外に、石川遼選手、河本力選手、清水大成選手、金谷拓実選手、星野陸也選手ら数多くの日本人選手が出場します。期待しているのは、オリンピック出場を目指している星野陸也選手。肺の病気(気胸)で休養していたので全米オープンが復帰戦になるわけですが、星野選手らしいいいプレーを期待したいと思います。
(写真:Getty Images)
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