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大化けするかも!?トーナメントレコードでツアー初優勝を果たしたデービス・トンプソン【佐藤信人のPGAツアーアフタートーク】
2024年7月11日(木)午前11:30
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イリノイ州のTPCディアランで開催された「ジョンディアクラシック」は、各選手がバーディー合戦を繰り広げる中、PGAツアー2年目のデービス・トンプソンが2位に4打差の28アンダーをマークし、初優勝を飾りました。激戦の模様を、ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロに振り返ってもらいました。
知名度はまだ低いがアマ時代から注目を集めていたトンプソン
優勝を飾ったのはツアー2年目のデービス・トンプソン。まだ馴染みのない選手だと思いますが、ルーキーイヤーだった昨年、ザ・アメリカンエクスプレスでジョン・ラームと優勝争いをして2位に。また、今シーズンも全米オープンで9位に入ったほか、ロケットモーゲージクラシックでは2位タイと、いつ優勝してもおかしくない成績を挙げていたこともあって、私自身はそれほど驚きませんでした。
彼の出身校であるジョージア大学でも、早くから注目を集めていた逸材で、近い将来、メジャータイトルを手にしたり、ライダーカップに出場するだろうと、彼のことを高く評価していた先輩プロも多かったようです。
調べてみると、わずか1週間ですが、世界アマチュアランキングで1位になったことがあるほか、21年にスタートした大学生に門戸を開く「PGAツアー・ユニバーシティー」のランキングでも2位に入るなど、まさにエリート街道を歩んできた選手。そんな彼が順調に成長して、初優勝を手にしたというところでしょうか。
スコアが大会新記録の28アンダーというのも立派だと思います。同じコースでも天候などによってコンディションが変わるため、選手たちはあまり記録を意識しないものですが、それまでの大会記録保持者であるマイケル・キムの、「もうそれ以上スコアを伸ばすのは勘弁してくれ」とのツイートには少し笑ってしまいました。
ゲームを振り返ると、最終日最終組が、トンプソンとアーロン・ライ、エリック・コールの3人。コールは昨年、優勝争いを何度もして、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを取っているし、ライも2週連続で最終日最終組を経験。そんな3人に、プロに転向したばかりのマイケル・トービヨーンセン、アマチュアのルーク・クラントン辺りが絡んできたらかなり面白い戦いになるだろうと思っていたのですが、トンプソンが序盤から抜け出し、それに周りが追いつけなかった。ただ、最後に若手が追い上げてきたので、最後まで楽しめました。
トンプソンはこの優勝によって全英オープンの出場権を獲得。彼が初めての全英でどこまで頑張れるかは分かりませんが、全米オープンでも9位タイに入っているほか、周囲の評価が高いことも考えると、全英だけでなく、今後、どういう選手に化けていくかが楽しみです。
初日に、ツアー史上13人目の50台(59)をマークしたヘイデン・スプリンガーにも少し触れておきましょう。ゴルフとは関係のない話ですが、彼は昨年の秋にお子さんを亡くされています。そのお子さんというのが、生まれたときから先天性の病に冒されていて、長く生きて2、3日といわれていたのが、3年間も生きることができたそうです。もちろんだからといって、悲しみが和らぐわけではなく、喪失感は大きかったと思われますが、お子さんとの別れから1カ月後にはQスクールに挑み、今年のツアー出場権を獲得しました。
そういうストーリーを持った選手だったので、私自身も“奇跡の優勝”を少し期待していたのですが、今回は残念ながら初日のリードを生かすことができませんでした(最終成績は7位タイ)。とはいえ、我々が知り得ない強さを持っていると思うので、いつかは爆発してくれるはず。今後も注目したいと思っています。
日本人選手として唯一出場した久常涼選手についても話しをしましょう。今回は、32位タイという、比較的いい位置で予選を通過したので、上位に上がってきてくれることを期待していました。おそらく本人も、手応えはあっただろうし、気分も盛り上がっていたと思いますが、決勝ラウンドはスコアを伸ばせず、悔しい結果となりました。
ただ、久常選手にとってのシーズンはこれで終わったわけではなく、スコティッシュオープン、3Mオープン、ウィンダムチャンピオンシップと、まだ3試合残っている。今の久常選手ならば、この状態をキープしてやり続ければ、必ずハマるときが来ると思うので、プレーオフにも進むことも可能じゃないかと。そんなポジティブな期待を抱きながら、残りの試合を見守りたいと思います。
(写真:Getty Images)
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