海外男子
ビクター・ホブランドは完璧主義過ぎる「不健全」ゴルファー!?【佐藤信人のPGAツアーアフタートーク】
2025年3月27日(木)午後0:03

- この記事のキーワード
「バルスパーチャンピオンシップ」が今年もフロリダ州イニスブルックリゾートで開催され、23年シーズンの年間王者、ビクター・ホブランドが11アンダーで、2年ぶりの優勝を飾りました。日本人選手は、久常涼選手、大西魁斗選手が予選を通過。最終日、首位に2打差(5アンダー)の5位タイでスタートした久常選手は優勝には届かなかったものの3つスコアを伸ばし、4位タイに入りました。同大会の模様を、ゴルフネットワークで解説を務めた佐藤信人プロに振り返ってもらいました。

まずは8アンダー、4位タイと健闘した久常涼選手の話からしましょう。プレーそのものも素晴らしかったのですが、私が感心したのはその落ち着いたプレー態度。最終日、全英オープンチャンピオンのシェーン・ラウリー(アイルランド)と同組でしたが、全く物怖じせず、また優勝争いの雰囲気にも飲まれることもなく、ゲームに集中していた点がとても良かったと思います。
4日間戦って上位でフィニッシュをしたというのは、順位だけでなく、モチベーションが上がって自信にも繋がるはず。今後がますます楽しみです。また、大西魁斗選手も初の予選通過で、最終的にイーブンパーの42位タイと健闘。徐々に力を発揮してきたという感じです。
さて、優勝争いの話に移りましょう。ビクター・ホブランドとジャスティン・トーマスの争いは、16、17番の2ホールに凝縮されていたといってもいいでしょう。まずは16番パー4。ここまでトーマスが2打リードしていたのですが、ドライバーをチョイスして左に引っかけてボギーにしてしまった。一方、あとの組でプレーをしていたホブランドはドライバーを使わずに刻んでバーディー。2人の差は一気に2打縮まり、ホブランドがトーマスに追いつく形になりました。
そして迎えた17番パー3では、2人とも素晴らしいショットでワンオン。カップまでの距離もほとんど同じくらいだったのですが、ここで明暗が分かれました。細かい傾斜が書かれているヤーデージブックを見ると、先にプレーをしていたトーマスのラインは矢印が3方向に向かっていて、どちらに曲がるか分からない。一方、あとでプレーをしたホブランドのラインは、軽いフックで分かりやすかった。結果は、トーマスが外していたのに対し、ホブランドがしっかり決めて逆転。あの場面では、“優勝者の運”みたいなものがホブランドにはあったような気がします。
それにしても、ホブランドにはいろいろな意味で驚かされます。23年にはPGAツアーの年間王者になって、24年はさらなる活躍が期待されていたのですが、その24年は、「自分が思っているフェードが打てない」という理由で、コーチを変えるという衝撃的なニュースから始まりました。さらにそこからコーチを何人も入れ替え、最終的には「全米プロ」で3位に入ったのと、「フェデックスセントジュードチャンピオンシップ」で2位に入ったことで「ツアーチャンピオンシップ」まで辿り着きましたが、期待されたほどの成績は残せなかった。試行錯誤は今季も続いていて、彼のコメントなどを見ても、私からすると“不健全ゴルファー”としか思えないほど歪んで見えたものです。
そもそもゴルフでのナイスショットというのは、いつも打てるわけではありません。誰もが完璧を目指すけれども、一方で完璧ではないことも受け入れなければいけないスポーツなんですが、ホブランドは満足なプレーができないと試合にも出ないというプレーヤー。実際、昨シーズンは16試合にしか出ていません。今季も同じような感じで、「バルスパー」も直前になってエントリーしたと聞いています。
ただ、私には不健全に見えるけど、その辺りが一流の証しなのかもしれません。日本では片山晋呉選手がそのタイプで、毎試合パターを替えたり、握り方を変えたりしていましたが、彼らは人が正しいといわれることを疑心暗鬼でやるよりは、自分はこれだっていう確信を持ってやる方がいいと思うんでしょうね。しかも、そんな試行錯誤を繰り返しながらも、今回のホブランドのようにしっかり勝ってしまう。私自身、首を傾げながらも、本当にすごいゴルファーなんだなということを改めて感じました。
さて、次戦は「テキサスチルドレンズヒューストンオープン」。開催のメモリアルパークゴルフコースは距離が長くて、それでいてパーは70。タイプ的にはトーリーパインズに似ていて、ドライバーの出来が大きな影響を及ぼします。スコアも2桁いくかどうかの難しいコースですが、日本人選手も勢いが出てきているようなので、4人揃って、それが無理でも誰かしら今週のように優勝争いに絡んでほしいと思っています。
(写真:Getty Images)
全英王者シェーン・ラウリーと同組も自分を見失わなかった久常涼

まずは8アンダー、4位タイと健闘した久常涼選手の話からしましょう。プレーそのものも素晴らしかったのですが、私が感心したのはその落ち着いたプレー態度。最終日、全英オープンチャンピオンのシェーン・ラウリー(アイルランド)と同組でしたが、全く物怖じせず、また優勝争いの雰囲気にも飲まれることもなく、ゲームに集中していた点がとても良かったと思います。
4日間戦って上位でフィニッシュをしたというのは、順位だけでなく、モチベーションが上がって自信にも繋がるはず。今後がますます楽しみです。また、大西魁斗選手も初の予選通過で、最終的にイーブンパーの42位タイと健闘。徐々に力を発揮してきたという感じです。
「不健全」にみえることが「一流の証」でもある
さて、優勝争いの話に移りましょう。ビクター・ホブランドとジャスティン・トーマスの争いは、16、17番の2ホールに凝縮されていたといってもいいでしょう。まずは16番パー4。ここまでトーマスが2打リードしていたのですが、ドライバーをチョイスして左に引っかけてボギーにしてしまった。一方、あとの組でプレーをしていたホブランドはドライバーを使わずに刻んでバーディー。2人の差は一気に2打縮まり、ホブランドがトーマスに追いつく形になりました。
そして迎えた17番パー3では、2人とも素晴らしいショットでワンオン。カップまでの距離もほとんど同じくらいだったのですが、ここで明暗が分かれました。細かい傾斜が書かれているヤーデージブックを見ると、先にプレーをしていたトーマスのラインは矢印が3方向に向かっていて、どちらに曲がるか分からない。一方、あとでプレーをしたホブランドのラインは、軽いフックで分かりやすかった。結果は、トーマスが外していたのに対し、ホブランドがしっかり決めて逆転。あの場面では、“優勝者の運”みたいなものがホブランドにはあったような気がします。
それにしても、ホブランドにはいろいろな意味で驚かされます。23年にはPGAツアーの年間王者になって、24年はさらなる活躍が期待されていたのですが、その24年は、「自分が思っているフェードが打てない」という理由で、コーチを変えるという衝撃的なニュースから始まりました。さらにそこからコーチを何人も入れ替え、最終的には「全米プロ」で3位に入ったのと、「フェデックスセントジュードチャンピオンシップ」で2位に入ったことで「ツアーチャンピオンシップ」まで辿り着きましたが、期待されたほどの成績は残せなかった。試行錯誤は今季も続いていて、彼のコメントなどを見ても、私からすると“不健全ゴルファー”としか思えないほど歪んで見えたものです。
そもそもゴルフでのナイスショットというのは、いつも打てるわけではありません。誰もが完璧を目指すけれども、一方で完璧ではないことも受け入れなければいけないスポーツなんですが、ホブランドは満足なプレーができないと試合にも出ないというプレーヤー。実際、昨シーズンは16試合にしか出ていません。今季も同じような感じで、「バルスパー」も直前になってエントリーしたと聞いています。
ただ、私には不健全に見えるけど、その辺りが一流の証しなのかもしれません。日本では片山晋呉選手がそのタイプで、毎試合パターを替えたり、握り方を変えたりしていましたが、彼らは人が正しいといわれることを疑心暗鬼でやるよりは、自分はこれだっていう確信を持ってやる方がいいと思うんでしょうね。しかも、そんな試行錯誤を繰り返しながらも、今回のホブランドのようにしっかり勝ってしまう。私自身、首を傾げながらも、本当にすごいゴルファーなんだなということを改めて感じました。
さて、次戦は「テキサスチルドレンズヒューストンオープン」。開催のメモリアルパークゴルフコースは距離が長くて、それでいてパーは70。タイプ的にはトーリーパインズに似ていて、ドライバーの出来が大きな影響を及ぼします。スコアも2桁いくかどうかの難しいコースですが、日本人選手も勢いが出てきているようなので、4人揃って、それが無理でも誰かしら今週のように優勝争いに絡んでほしいと思っています。
(写真:Getty Images)
関連番組

2025 バルスパーチャンピオンシップ
3月20日(木)~3月23日(日)