USGAのコースセッティングが演出したサンデーバックナインのドラマとは?
2015年6月22日(月)午後9:40
21歳、ジョーダン・スピースのメジャー二連勝で幕を閉じた今年の全米オープン。TVを見ながら「あ?!おー!」と手に汗握る優勝争いに熱くなった方も多いのではないでしょうか?
ティーの位置やピンポジションで18ホールのコースが22?25ホールくらいあるように思えてしまうという「チェンバーズベイ」。
予選ラウンド以上に難易度が増した3日目を終えて、最終日はどんなセッティングになるのか?と注目が集まりましたが、予想とは裏腹にスコアが出やすい試合展開となりました。シリーズ企画「データで振り返る全米オープン」、最終回となる今回もいろんなデータから全米オープンを振り返ってみましょう。
コースの全長は四日間で最も短い7,384ヤードに
(写真提供:Getty Images)
3日目以上にタフなコースセッティングになると予想されて中、最終日はいくつかのホールでティーボックスを前に出し、ピンポジションを変えるなど、USGAはスコアの出やすい、アグレッシブに攻めてこれる設定にしました。
中でも12番と16番のPar4ではティーを前に出して、それぞれ12番270y、16番337yとなりました。16番はこれまで370y?420yの間で設定されていたため、ワンオンも可能なチャンスホールへと変貌しました。
そのほかのホールもいくつかティーを前に出したことで、コースの全長は四日間で最も短い7,384ヤードとなり、3日目と比べると300ヤードも短くなりました。
【コース全長】
1日目:7,497y
2日目:7,695y
3日目:7,637y
最終日:7,384y
距離が短くなった上、これまでの3日間と比べても風があったものの、前日の散水によりグリーンが柔らかくなっていたことで、好スコアが続出し、アンダーパーの人数は大会3日目の6人から22人まで増えました。
その結果、平均スコアは71.293と四日間で最も良いスコアに。
【ラウンド別平均スコア】
1日目:72.718
2日目:73,452
3日目:73.133
最終日:71.293
大会ベストスコアとなる64を出したアダム・スコットはラウンド後のインタビューで「最終日のピンポジションを見て、多くのホールで良いショットをすれば傾斜で寄ることはわかっていた」とUSGAの狙いを理解していた。結果、攻めの姿勢で望んだスコットは6バーディ、ノーボギーと完璧なゴルフで通算3アンダー4位タイまで順位を大きく上げることになりました。まさに何が起こるかわからない最終日となりました。
最終日をエキサイティングなセッティングにしたUSGA
(写真提供:Getty Images)
ヤーデージ以上に驚いたのが、今大会で話題となった1番と18番のパー9設定だ。大会前には最終日最終ホールはパー4にする意向を示していたUSGAでしたが、初日、3日目と同じく1番はパー4、18番をパー5という設定に。
【1番ホール】
1日目 Par4(501y):難易度2
2日目 Par5(593y):難易度15
3日目 Par4(499y):難易度11
最終日 Par4(443y):難易度5
【18番ホール】
1日目 Par5(617y):難易度16
2日目 Par4(514y):難易度5
3日目 Par5(577y):難易度16
最終日 Par5(601y):難易度16
このセッティングに関して、ゴルフネットワークの中継で解説を務めるタケ小山プロは「USGAは終盤の上がり4ホールでスコアが出やすい設定にしてきた。15番Par3ははPWで打てる距離に、16番Par4は337Yでワンオンも可能、18番はPar5でバーディが取れるホールに。優勝争いでは上がり4ホールでスコアが動く。」と予想した通りに、15番以降でドラマが起きました。
セッティングによって変わる試合の流れ
ドラマ?:難易度が上がったスタートホール
パー4となったことで、パー5で楽にスタートできた2日目とは異なり、最終日のスタートからプレッシャーのかかるセッティングに。最終組の一つ前からスタートしたスピースは1番で3パットを叩いてボギー先行となり、前半は重たい空気が流れていました。
ドラマ?:確実に取りたい12番パー4
ワンオン可能な12番はバーディ必須でもありましたが、10番、11番と連続ボギーを喫したジョンソンは12番でバーディが取れず、一時優勝戦線から脱落。一方、12番で確実にバーディを取ったスピースとグレースは一騎打ちの様相に。
ドラマ?:ワンオン可能なパー4となった16番
トップタイで並んでいたスピースとグレースでしたが、好対照の結果に。グレースはティーショットを大きく見に曲げてOB。一方、スピースはバーディ奪取。16番の1ホールで3打差もつくことになりました。
【16番でバーディを決めこの日一番のガッツポーズ(写真提供:Getty Images)】
ドラマ?:チャンスホールの間に潜む17番
最終日の平均スコアは3.2267(難易度8)と上がり3ホールで唯一、平均スコアがオーバーパーとなった17番Par3(219y)。ここでスピースがなんと3パットでダブルボギー、ジョンソンがバーディを奪い、このホールで3打縮まることに。
【17番で痛恨のダブルボギーを叩くスピース(写真提供:Getty Images)】
ドラマ?:イーグルもあり得る最終ホール
そして、勝負の行方は最終18番ホールまでもつれました。18番がパー5設定となったことで、イーグルも狙えるホールに。当然、スピースもジョンソンもイーグルを狙って2オンに成功。先に回っていたスピースはイーグルならずバーディフィニッシュ。ジョンソンがイーグルを取れば逆転優勝、バーディでプレーオフという状況で、まさかの3パットで勝負あり。
【18番ホールでまさかの結末・・バーディパットを外すジョンソン(写真提供:Getty Images)】
ホールアウト後にスピースは「ダスティン・ジョンソンがイーグルを決めるだろうから、自分は負けたと思っていた。17番でダブルボギーを打った後に、18番がPar5で良かった。」と劇的な結末となった優勝争いを振り返った。
【ジョーダン・スピース 全米オープン成績】
【ダスティン・ジョンソン 全米オープン成績】
今回の全米オープンについて、ゴルフネットワーク解説陣の見解は?
タケ小山プロ「コースの不評とかもあるけど、力のある選手は残る。上位にいるプレーヤーは今の米ツアーを引っ張るプレーヤー。ここに打ったら寄るってところにボールを置いてる。過去には帝王ニクラウスも、毎年酷評されるので、ネガティブな要素があると自分のゴルフが出来なくなってしまうため、ジャックニクラウスは全米OPの記事を読まないようにしていた。」
内藤雄士氏「絶対にバーディが必要な12番で一つの流れがあった。18番がパー4設定であればまた違った展開になっていたかもしれない。スピースは最小限のボギー、ダブルボギーで押さえた。最終日は出だしから3パットをしてしまうが、自分のゴルフを持ち直した精神力がすごい。」
記録と記憶に残る全米オープンとなったチェンバーズベイ。4大メジャーの中でも最も過酷なコースセッティングで開催されると言われている全米を改めて印象付けた大会でもあった。来年の全米オープンはどんなコースセッティングとなるのだろうか。
筋書きのないドラマ、あの興奮をもう一度!大接戦の全米オープンをプレイバック 6/27(土)?28(日)緊急放送決定
大接戦となった今年の全米オープンを視聴者皆さまからのリクエストにお応えして、緊急放送致します。難コース「チェンバーズベイ」を舞台に繰り広げられた熱い戦いをぜひご覧下さい。
【緊急放送】
6/27(土)午前11時?午後2時 「全米オープンゴルフ選手権3日目」
6/28(日)午前11時?午後2時 「全米オープンゴルフ選手権最終日」
※注意※
権利上の都合により、「全米オープンゴルフ選手権」の中継はGOLF NETWORK PLUS TV等での、パソコン・スマホ・タブレットによる「全米オープンゴルフ選手権」の配信はございませんのでご了承ください。