単独首位に躍り出たミケルソンの「愛は強し」(舩越園子の現地レポート/2016全英オープン)
2013年4月12日(金)午前10:00
全英オープン初日。46歳のフィル・ミケルソンがメジャー大会における最少ストローク記録に並ぶ63をマークし、単独首位に躍り出た。それは、驚きのようで驚きではなく、「好きこそ、ものの上手なれ」というフレーズがそのまま当てはまりそうである。
かつて「メジャータイトルなきグッドプレーヤー」と呼ばれていたころのミケルソンは、米国内の3つのメジャーでは優勝争いにたびたび絡みながら惜敗を繰り返していたが、全英オープンではむしろ苦戦を繰り返し、「全英は苦手」「全英は不得意」というレッテルを貼られていた。
しかし、そういうときでもミケルソンは「全英は大好き」と言い続けていた。かなり叩いて予選落ちしたときでさえ「このコースは素晴らしい。こんな素敵なコースがあるスコットランドが僕は大好き。何度でも来たい」と答えた。そんなミケルソンが2013年にミュアフィールドの全英オープンを43歳で制したとき、その勝利を喜んだのはミケルソン本人よりスコットランドの人々のほうだった。
全英オープンの前週にはほぼ毎年、スコティッシュオープンに出場し、「最高の準備ができた。最高の状態で全英に臨める」と笑顔で語ったミケルソン。その彼が、とうとうスコットランドの地でクラレットジャグを掲げたことは「私たちにとってもうれしいこと」と地元の人々は誇らしげだった。
世界中の人々にとっても、ミケルソンのあの全英優勝は励みになったのだと思う。好きで好きで、ずっと恋い焦がれていた土地の上で、ずっと相手にしてもらえなかったリンクスランドの女神から43歳にしてついに微笑んでもらったミケルソン。目をそらさず、ずっと好きでいれば、いつか願いは叶うもの。そう信じたくなる優勝だった。
そんなミケルソンが再びスコットランドで首位に浮上したことは、彼の一途な恋心を思えば、いまさら驚くことではない。
「ミュアフィールドの最終日に勝るラウンドはないけど、今日はそれに次ぐぐらいの好ラウンドだった」
あと1つスコアを伸ばせば、記録更新になっていた。
「18番のバーディーパットは、ある意味、歴史的瞬間だった。(入らなくて)残念だったけど、人生においてそういう機会を得ることはなかなか無い。素敵なひとときだった」
歴史を塗り替えることはできなかったけれど、希少な経験を喜び、それをさらなる力へ変えていく。ミケルソンはそんな前向きな姿勢で「難しい」を「易しい」へ変え、ピンチをチャンスへ、「好き」を「得意」へ変化させ、最後には好結果を生み出してきた。そうやって43歳で全英初制覇を成し遂げた彼が、46歳で全英2勝目を挙げても不思議ではない。彼がどれほど全英とスコットランドを愛しているか。その好きの度合いを考えれば、驚くことなど何もない。
そう言えば、ミケルソンはゴルフが五輪競技に復帰することが決まった当初から「五輪に出たい。五輪を目指す」と公言していた。しかし実際は米国代表の4名の枠には入れず、「僕の大きな目標の1つだったのに、、、、」と残念がった。しかし、彼は落だけでは終わらず、大好きゆえにアタックし続け、それが彼の力になっていく。「五輪出場は生涯の経験。4年後の次回は僕は50歳。もはや代表になれるかどうかわからないけど」。そう言いながらも彼は五輪にも想いを寄せ続けている。
明日の2日目は悪天候が予想されている。「悪天候、どうぞどうぞ。そのために先週もスコティッシュオープンに出て、スコットランドらしい天候を学んだ。僕はすでにこのスコットランドで11日を過ごしているからね」
ミケルソンを上回るスコットランド・ラバーは今のところ見当たらない。好きこそ、ものの上手なれ。そして、愛は強し。そんなことを思わせるトゥルーンの初日だった。
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全英オープンゴルフ選手権放送予定
2日目 7月15日(金) 午後2:30?翌午前4:00
3日目 7月16日(土) 午後6:00?深夜3:30※最大延長翌午前6:00まで
最終日 7月17日(日) 午後5:00?深夜3:00※最大延長翌午前7:00まで
写真提供:Getty Images