落ちては上るステンソンのメジャー初制覇(舩越園子の現地レポート/2016全英オープン)
2013年5月3日(金)午前10:00
全英オープン最終日は因縁対決。確かに、フィル・ミケルソンとヘンリック・ステンソンの優勝争いは、2013年のミュアフィールドの再現であり、その前週のスコティッシュオープンの再現でもあった。あの年、ミケルソンはどちらも優勝し、ステンソンはどちらも惜敗した。
だから今年、ロイヤルトゥルーンでその雪辱を果たしたいという気持ちがステンソンの胸の中にあったことは間違いない。
「いつだってリベンジだ」
そして、サンデーアフタヌーンの2人の戦いは、まさに手に汗握る接戦になった。だが、ステンソンはミケルソンを倒そう、負かそうと思いながら戦っていたわけではない。
「これまで全英では2位が1回、3位が2回。でも結果を気にしても、いいことは何もない。リベンジは是非ともしたい。でも雪辱を望むより、いいゴルフをしたい。フィルと戦うより、コースと戦うつもりだ」
3日目の夜、そう言っていたステンソンは、その言葉通り、最終日は自分のゴルフに徹していた。メジャーの最終日を首位で迎えたのは初めてとあって、出だしは緊張の面持ちでボギー発進となった。しかし、すぐさま2番からは3連続バーディーを奪った。
7番では3メートルのバーディーパットを外して落胆したが、8番では3メートルを沈めてバーディー獲得。11番では3パットのボギーを喫したが、14番からの上がり5ホールで4つバーディーを奪った。
その間、ミケルソンと並んだり、抜き返したり。それは確かに2人の接戦ではあったけれど、ステンソンのプレーがミケルソンのプレーに左右されたことはなく、ステンソンは自分がスコアを落としてはその落胆を糧に自力で這い上がり、さらなるバーディーを奪っていった。そうやって淡々と18ホールを終えたとき、ミケルソンとの差は3打に開き、メジャー初優勝を手に入れることができた。
「落ちては上る」。ステンソンのそんなプレーぶりは、彼の人生の歩みそのものだ。プロ転向から間もない2000年代始めごろと2010年から2011年にかけて、2度のスランプを経験したが、どちらも乗り越え、復活した。
今年はマスターズ後の米ツアーで2週連続予選落ちを喫し、先の全米オープンは途中棄権と振るわない日々が続いていた。しかし、欧州ツアーのBMWインターナショナル・オープンを制して復調。この全英では「勝てる気がする。今回は僕の番が来る」。そう感じていたという。
そう、人生においてもキャリアにおいても十分すぎるほど多くの苦しく辛い出来事を味わってきたのだから、「落ちては上る」が自分流だとすれば、そろそろ上ってもいいのではないか。ステンソンはそう感じていた。
最終日。勝利に向かって邁進するためのターニングポイントは14番だった。
「これまで何回こういうチャンスに遭遇しては逃してきたかと考え、14番は取らなきゃいけないと思った」
ミケルソンを倒すためではなく、自分が勝つために。11番で3パットした落胆を力に変え、14番で6メートルのバーディーパットを沈めた。
「それがターニングポイントになった」
15番でも16番でも続けざまにバーディー獲得。そして18番ではダメ押しのバーディー。終わってみれば、3打差を付けて快勝し、悲願のメジャー初優勝、そしてスウエーデン人男子初のメジャー制覇も同時に達成。
それはステンソンの人生の素晴らしいターニングポイントに、きっとなってくれるはずだ。
文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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写真提供:Getty Images