新たな時代到来の予感
2015年6月2日(火)午後4:00
米フロリダ州オーランドより番組制作スタッフが、独自視点でお届けするユニーク なゴルフ最新情報!
フェデックスカップ・プレーオフシリーズまで今週の全米プロ・ゴルフ選手権と続くウィンダム・チャンピオンシップを残すのみとなったPGAツアーでは、WGCブリヂストン・インビテーショナルとバラクーダ・チャンピオンシップの2試合が行われました。優勝したのはともに全米オープンタイトルを持つローリー・マキロイとジェフ・オギルビー。マキロイは全英オープンに続く2連勝、初めてのWGCの大会制覇で世界ナンバーワンに返り咲き、WGCの大会で3勝しているオギルビーは4年ぶりツアー通算8勝目をあげました。マキロイはスタート前に、63が目標とターゲットナンバーを口にします。そのマキロイに3打差をつけて最終日を迎えたのはセルヒオ・ガルシア。3週間前の全英オープンで強調された世代交代、それが現実のものとなりつつあるのは間違いありません。3連続バーディでスタートしたマキロイは63どころか59もあり得るのではないかと思わせる滑り出し。あっという間に二人の立場は 逆転します。4日間とも、ディボット跡がないきれいなフェアウエイからグリーンを狙い続けたマキロイ・・・まるでロボットのようにピタッと収まるブレないフィニッシュ。2日目61をたたき出したガルシアも抜群の距離のコントロールで食い下がりましたが、結局バーディを一つしか取れず1オーバーの71で、66で回ったマキロイに逆転優勝を許してしまいました。マキロイが目指すのは、当然今週の全米プロで3試合連続優勝を達成すること。そしてそれを誰よりも阻みたいのが2試合続けてマキロイにトロフィーをさらわれたガルシアに他なりません。タイガー・ウッズがいなければきっとメジャーで勝っていたであろう精鋭の一人、ガルシアは、タイガーが猛威を失った今、今度はマキロイに行く手を阻まれるなんてことは考えたくないでしょう。マキロイは「ガルシアとスタート前、一緒に昼食をとった。今週は結構一緒に過ごした」と言っていました。最終組の2人が一緒にご飯を食べてから 決勝ラウンドに臨むなんてめったにないはずです。全英でガルシアと一緒に2位につけたリッキー・ファウラーは今回8位に終わりましたが、3人が仲良くランチやディナーのテーブルを囲む姿が目に浮かびます。それも新たな時代の到来を感じさせます。
最終組がラウンドを開始するはるか前にスタートしていたタイガーは、本人曰く2番ホールでバンカーから嫌なスタンスでボールを打ったあと、はずみでバンカー内に右足で着地した際、腰を痛めたとのこと。その時顔をゆがめることはありませんでしたが徐々に悪化して行ったようで、ついに9番のティショットを放ったあと痛みですぐには動けず、ギブアップ。迎えに来たカートに乗り込もうと歩く姿は、痛々しいものでした。最終組がラウンドを終える前にフロリダの自宅に戻っていたタイガー。おそらくすぐに医師の診察および手当を受けたと思われますが、単に筋肉を痛めただけで手術した患部とは関係ないのか、それとも故障の再発なのか秘密主義のタイガーからすぐに明らかにされることは期待できません。いずれにせよ、痛みが消えたとしても今週の全米プロに出場するのは賢い判断とはいえないでしょう。出場したら復帰以上に驚きます。3月31日に腰の手術を受け、6月26日にツアーに復 帰し、3試合目に棄権となればカムバックが早すぎたからと言われて当然です。残りのシーズンを棒に振ってでもゆっくりと時間をかけて腰を完治させるというオプションはなかったのでしょうか?当然あったでしょう。これは憶測にすぎませんが、タイガーの周りには、嫌われてもいいから絶対にこれだけは言っておくと苦言を呈する人がいないのだと思います。タイガーにストレートに注意や助言できる人はおそらく亡くなったお父さんだけだったのでしょう、腰の手術を担当した主治医やリハビリ担当の人達も、例えばタイガーに「クイッケン・ローンズ・ナショナルに絶対に出るべきではないということはないんですね?」と聞かれて、「もちろん、絶対ということはない」としか答えられなかったのではないでしょうか?本人がもう大丈夫といい、レントゲン検査の結果も良好で以前のようにスイングできたら一日も早く復帰したいと訴える患者に「ダメだ、今年いっぱい休みなさい」とは言いにくいかもしれません。でもタイガーがこれから達成しようということを本当に理解しているならチームタイガーの誰かが悪者になることはできたはずです。もちろん、タイガーが聞く耳を持たなかったということも考えられますが、頑固でも長期的なリスクを計算できないほど愚かな人間だとは思えません。ただ単に自分の肉体を過信していたのではないでしょうか?それが結果として腰痛の再発を招いてしまったとしたら、後悔先に立たずなんてもんじゃないでしょう。ブリヂストン・インビテーショナルと全米プロで優勝したらプレーオフシリーズに出られると言っていたタイガーですが、心の中では勝てないことをわかっていたのではないでしょうか?今はただ今回の故障がキャリアを台無しにするものでないことを祈るだけです。
タイガーより早く、開幕前にブリヂストン・インビテーショナルを棄権したのがダスティン・ジョンソンでした。ジョンソンは、自分が抱える問題を克服するためツアーから長期離脱すると発表。誰もがその問題とは何なのか推測しました。そしてまもなく、薬物検査で陽性反応が出たのが3度目だったため半年間出場停止となったと報道されました。PGAツアーは出場停止ではないとすぐさまコメント。選手には処分の不服申し立ての権利がありますが、ジョンソンは自主的にツアーを離れる道を選んだのでしょう。ツアーはドーピング以外の薬物使用に関して当該者や処分等を公表しておらず、そんな不透明な部分が再び物議をかもすことになりましたが、ジョンソンはフェデックスカップの年間王者になれる位置につけていただけに、薬物使用が事実なら本当に残念です。ジョンソンの周りにも彼のことを思って厳しく注意してくれる人がいないのかもしれません。ジョンソンを昔から知っている人の中には、彼が問題を抱えていたとしてもゴルフには全く影響がなかったと言う人もいます。それができたから最初に発覚したあと絶つことができなかったのかもしれません。ジョンソンの元キャディは今のタイガーのキャディ。二人のボスに助言したくても何も言えない辛い立場だったのかもしれませんね。
さて今週はいよいよシーズン最後のメジャー、全米プロ・ゴルフ選手権です。マキロイ、ガルシア、ファウラーのビッグイベント盛り上げ隊に是非加わってほしい、ブリヂストン・インビテーショナルで12位につけた松山英樹選手と石川遼選手の米ツアーレギュラー組、全英オープンで松山選手とともに39位だった小田孔明選手、そして谷原秀人選手、4人の日本勢がケンタッキー州にあるジャック・ニクラス設計のバルハラ・ゴルフクラブで4日間ワクワクドキドキさせてくれることを期待しましょう。
「全米プロゴルフ選手権」放送日時 ※全ラウンド衛星生中継!
1日目:8月7日(木) 深夜2:00?翌朝9:00 (※最大延長 午前10:00)
2日目:8月8日(金)深夜2:00?翌朝9:00 (※最大延長 午前10:00)
3日目:8月9日(土)深夜0:00?翌朝9:00 (※最大延長 午前10:00)
最終日:8月10日(日)深夜0:00?翌朝9:00 (※最大延長 午前11:00)
「LIVE FROM 全米プロ」放送日時
※全米プロゴルフ選手権をもっと楽しく!臨場感あふれるレポートをお届け!!
8/5(火)午前9:00?(再あり)連日衛星生中継
筆者:Makiko Minoya
1995年 州立セントラルフロリダ大学 ジャーナリズム科卒業
1996年 ゴルフチャンネル入社(米フロリダ州オーランド)
好きなゴルファー:タケ小山プロ
[画像は全て©Getty Images]